政治学者として広く知られる姜尚中氏(75)が、長崎県の鎮西学院で学院長を務める中、その「老境」における言動が大きな物議を醸している。孔子の「論語」で「従心」とされる70歳とは裏腹に、姜氏の「思うがまま」の振る舞いが学内で泥沼の内紛を引き起こしていると詳細に報じられた。かつて別の大学で経験した辞任劇とも重なるこの一連の問題は、鎮西学院の教育体制と未来に深刻な影を落としつつあり、本稿ではその背景と実態、そして今後の行方に深く迫る。
政治学者・姜尚中氏の肖像写真
過去の「苦い経験」と鎮西学院での「挽回」への執着
姜尚中氏が鎮西学院で直面する深刻な内紛の背景には、彼自身の過去の経験が色濃く影響している。学院関係者の証言によると、姜氏は以前、別の大学で学長を務めていた際、その出勤日数の少なさや運営方針を巡る意見の相違が原因で教授陣との関係が著しく悪化し、最終的に辞任せざるを得ない状況に追い込まれたという。この「苦い経験」を払拭し、教育現場での名誉挽回を図りたいという強い執着が、現在の鎮西学院における彼の行動を突き動かす根底にあると指摘されている。
高校野球部監督・校長交代を巡る権力闘争
姜氏の「功名心」が引き起こした具体的な問題は、まず高校野球部の監督人事を巡る不自然な介入から始まった。学院の著名なOBであり、過去に高校の球場改修のため1億円以上もの巨額な寄付をした牧平年廣氏(91)に注目した姜氏は、さらなる寄付を引き出すことを目論み、2023年春頃に「高校野球部を強化する」という名目を掲げ、当時の監督の交代を突如提案した。しかし、この監督は人格者として学内外から厚い信頼を得ており、学院側が「三顧の礼」をもって招いた人物であった。そのため、前校長の川崎健氏は「保護者も選手も納得しない」と姜氏の提案に強く反対。姜氏は一度は提案を撤回したものの、これを機に川崎氏との関係は決定的に悪化し、公私ともに口も利かない状態となった。さらに、同年年末には定年まで残り1年を残していた川崎氏の任期満了の際、姜氏は学内に「対立候補」を立ててまで、強引に校長の交代を画策するという前代未聞の行動に出た。
鎮西学院長としての姜尚中氏、学内での対立を示す表情
学内の強い反発と「不可解な」学院長の行動
姜氏による度重なる人事介入の試みに対し、鎮西学院の学内では強い反発の声が巻き起こった。教職員からは「教職員一同」の名義で、現職の川崎氏の続投を求める書類が学院理事らに正式に提出される事態となり、姜氏の目論見は結果的に頓挫せざるを得なかった。学院関係者は、姜氏の「不可解な」行動原理について強い疑問を呈している。2023年に出身地の熊本県に移住した姜氏の出勤日数は年間100日にも満たない状況であるにも関わらず、学院の体制や人事に強く口を出し、却って学内の対立や混乱を招くばかりであるため、「一体何をしたいのか分からない」との困惑の声が多数上がっている。
再任問題に見る「異常事態」と鎮西学院の未来への懸念
この一連の騒動の集大成ともいえるのが、学院長の再任問題である。姜氏は今年3月に学院長の任期満了に伴う再任時期を迎えたが、続投に必要な理事からの賛成票を依然として得られず、異例中の異例として2回もの投票やり直しが行われている。通常、学院長の再任は形式的に認められるケースがほとんどであり、このような票が足りないという事態は、学内ガバナンスにおける想定外の「異常事態」と認識されている。学院関係者は「自ら身を退くべき場面」であるとの見方を示すものの、姜氏にはその気配すら見られないという。この異例の状況は、鎮西学院の今後の運営や教育体制に深刻な影を落とすだけでなく、学園全体のブランドイメージや未来図にも大きな懸念を抱かせている。
姜尚中氏を巡る鎮西学院の内紛は、過去の経験からくる「挽回」への執着と現在の権力欲、そしてそれに対する学内外の強い反発が複雑に絡み合った結果である。学院長の再任が異例の事態に陥り、学内の混乱が収束する兆しが見えない現状は極めて深刻だ。この問題が長期化すれば、鎮西学院の教育環境や社会的な信用にさらなる影響を及ぼす可能性は高く、今後の動向が引き続き注目される。