李在明(イ・ジェミョン)大統領は就任から2カ月となる11日、異例にも20人以上の政治家に対し特別赦免・復権を実施しました。この中には「祖国革新党」の曺国(チョ・グク)前代表や尹美香(ユン・ミヒャン)元議員、崔康旭(チェ・ガンウク)元議員など、過去に大きな議論を呼んだ人物が多数含まれており、歴代大統領の就任後初の赦免としては極めて珍しいケースとして注目されています。
李在明大統領初の特赦:異例の政治家多数恩赦の背景
過去の韓国大統領による初回の特別赦免では、政治家が主要な対象となることは稀でした。例えば、金大中(キム・デジュン)元大統領は1998年3月の就任記念赦免で非転向長期囚や良心囚、一般市民に焦点を当て、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領も2003年4月の初回赦免では公安、時局、一般事犯が中心でした。また、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の初回赦免ではサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長など企業家が多く含まれましたが、政治家は限定的でした。李明博(イ・ミョンバク)元大統領に至っては、赦免対象から政治家を除外しています。
しかし、李在明大統領の初の特別赦免名簿には、27人もの議論を呼ぶ政治家や元政府高官が名を連ねています。具体的には、子供の入試不正疑惑で懲役2年が確定した曺国前祖国革新党代表夫妻、曺前代表の息子に虚偽のインターン証明書を発給し入試不正に関与した容疑で有罪判決を受けた崔康旭前議員が含まれました。さらに、慰安婦関連後援金の横領疑惑などで懲役1年6カ月、執行猶予3年を宣告された尹美香元議員、そして解職教師5人を不当に特恵採用した容疑で懲役1年6カ月、執行猶予2年が確定した曺喜昖(チョ・ヒヨン)前ソウル市教育監も赦免対象となっています。
野党側からは、鄭燦民(チョン・チャンミン)元議員、洪文鐘(ホン・ムンジョン)元議員、沈鶴峰(シム・ハクボン)元議員が含まれました。彼らについては、4日に最大野党「国民の力」の孫恩錫(ソン・オンソク)非常対策委員長兼院内代表が、大統領秘書室長にメッセージアプリを通じて赦免を要請していたことが明らかになっています。鄭元議員は京畿道龍仁(ヨンイン)市長時代に不動産開発業者から数億ウォン相当の賄賂を受け取った容疑で、洪元議員は私学財団理事長在職中に校費数億ウォンを横領した容疑でそれぞれ懲役刑が言い渡され、現在服役中です。沈元議員は収賄容疑で懲役刑が確定し服役した後、2027年まで選挙権が剥奪された状態でした。
国民の不満と支持率低下:なぜ特赦は批判されるのか
今回の政治家多数に対する特別赦免・復権を巡っては、国民世論は好意的ではありません。特に曺国前代表の場合、まだ刑期が半分以上残っていることから、野党圏のみならず与党内部からも「任期序盤の国政運営の勢いを阻害する危険がある」との懸念の声が上がっています。
尹美香元議員の赦免についても、「慰安婦関連後援金を横領した人物を赦免することは、光復節(解放記念日)の意味に反する」との厳しい批判が噴出しています。同日公開された世論調査機関「リアルメーター」の調査結果によると、李大統領の国政遂行支持率は1週間で6.8ポイント下落し、就任2カ月で50%台に落ち込みました。これは就任2カ月間で最低の支持率であり、今回の特別赦免の影響が一部反映されたものとみられています。
歴代政権の特赦論争:繰り返される「恩赦慣行」の課題
大統領固有の権限である特別赦免は、その決定がしばしば政治家や企業家の復帰の足がかりとなるため、常に論議と批判の的となってきました。
尹錫悦前大統領は2022年8月、就任後初めての特別赦免で、サムスン電子の李在鎔会長やロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン)会長(重光昭夫)など、財界の主要人物を多数含ませ、「財閥特恵」だと物議を醸しました。
韓国の特別赦免制度に関連し、過去に釈放されたサムスン電子の李在鎔会長
さらに尹前大統領は同年12月、李明博元大統領と金泰孝(キム・テヒョ)元国家安保室第1次長も赦免しました。李元大統領の場合、収賄や横領などの重犯罪容疑で刑期が14年以上残っていたため、「不適切である」との指摘が相次ぎました。金元次長が国家安保室に勤務していた経緯から、「現職大統領の主要参謀を赦免したことは前例がない」という批判も受けました。
文在寅(ムン・ジェイン)元大統領も、2017年には李明博元大統領の「BBK」実所有者疑惑を提起し、選挙法違反の疑いを受けた「共に民主党」の鄭鳳株(チョン・ボンジュ)元議員を新年特赦名簿に含めました。当時、地方選挙を控えて鄭元議員の被選挙権を回復させるための「出馬用復権」との批判を招きました。鄭元議員はその後、ソウル市長選挙に挑戦しましたが、記者志望者へのセクハラ疑惑が提起され、結局出馬を断念しています。また、文元大統領は任期末の2021年、朴槿恵(パク・クネ)元大統領を新年特赦の対象としましたが、刑期が17年残っていた朴元大統領への赦免は、弾劾を招いた「ろうそく集会の民意に対する裏切り」だと批判されました。
朴槿恵元大統領自身も、大統領選挙当時に大手企業トップの重大犯罪赦免を制限することを公約していましたが、2015年にSKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長を赦免し、翌2016年にはCJグループの李在賢(イ・ジェヒョン)会長を赦免対象に含めました。この決定は「財閥特恵を防ぐという大統領選挙公約を破棄した」との批判を受ける結果となりました。
結論
今回の李在明大統領による初の特別赦免は、過去の政権と比較しても政治家の比率が高く、その中に議論の的となった人物が多数含まれている点で異例の措置と言えます。歴代政権においても、特別赦免は「財閥特恵」や「出馬用復権」といった政治的意図を巡る論争の対象となってきました。今回の赦免が国民の不満や支持率低下に直結していることは、韓国における特別赦免制度の運用と国民世論の間の複雑な関係性を示唆しています。今後の政局運営において、李大統領がどのように国民の信頼を回復していくかが注目されます。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: 李在明大統領、就任2カ月で初の特赦…議論の政治家多数含まれる Source link (Original Article)