日印両政府はインドのモディ首相が29日にも訪日し、石破茂首相と会談する調整に入った。両首脳は、インドが建設中の高速鉄道路線に、JR東日本が東北新幹線用に開発中の新型車両「E10系」を導入する方針で合意し、導入時期は日印でほぼ同時期の2030年代初頭とする方向だ。日本にとっては07年開業の台湾高速鉄道などに続く新幹線車両の輸出案件。最新鋭車両の提供を通じ、人口増と経済成長が著しいインドとの関係強化に弾みをつけたい考えだ。
モディ氏の訪日は国際会議に合わせた23年5月以来だが、両国首脳の相互往来の枠組みでは18年10月以来で約7年ぶりとなる。石破、モディ両氏は仙台市で東北新幹線を視察することも検討している。
高速鉄道はインド西部のムンバイ―アーメダバード間約500キロを約2時間で結ぶ計画で、インド初の高速鉄道路線になるとみられている。E10系はJR東日本が今年3月、設計着手を発表した新型車両で、営業運転上の最高時速は320キロ。30年度に東北新幹線での営業運転開始を目指している。日本の鉄道技術の象徴である新幹線の最新鋭車両がインドを走れば日印友好の象徴になりそうだ。
インドでは他にも複数の高速鉄道が構想されており、E10系の導入を機に新幹線方式の採用が広がる可能性もある。
両氏はまた、防衛装備品の移転など安全保障協力を推進し、両国が経済安全保障で連携するサプライチェーン(供給網)の強化や、IT人材を含む人的交流の拡大も確認する方針。モディ氏は月末には中国を訪問する予定で、その前に日印で「自由で開かれたインド太平洋」の推進を確認する狙いがある。【田所柳子】