今年、中国が「中国人民抗日戦争勝利80周年」と位置付け、愛国主義的なキャンペーンを強化している。この動きが、かつて融和ムードもあった日中関係にどのような影響を及ぼすのか、特に反日感情の高まりに対する懸念が広がっている。
中国の「抗日戦争勝利80年」キャンペーンの象徴的な集会風景
「日本の加害」を強調する抗日映画の相次ぐ公開
日本国外務省は、中国政府が本年を「中国人民抗日戦争勝利80周年」と定め、関連の映画放映や行事が実施されることに伴い、反日感情の高まりに特に注意を払うよう呼びかけている。実際に、この夏、中国では“抗日”をテーマとした映画が次々と公開されている。
注目される抗日映画には、南京事件を題材とした「南京写真館」、イギリス軍捕虜を中国漁師が救助する「東極島」、そして旧日本軍による細菌兵器開発を進めたとされる731部隊を題材とした「731」がある。特に映画「731」は、当初7月31日に公開予定だったが、満州事変の発端となった柳条湖事件の日である9月18日に延期され、物議を醸している。
今夏公開された“抗日”テーマの中国映画ポスター
中でも「南京写真館」は先月25日に中国で公開されると、興行収入370億円を突破する大ヒットを記録した。この映画は7日にはオーストラリアやニュージーランドで、そして15日からは北米でも一般公開される予定だという。
高まる反日感情と国内で発生した日本人襲撃事件
こうした抗日映画を鑑賞した中国の子どもたちの反応が、SNS上に多数投稿されている。ある男の子は劇場内で号泣し、映画鑑賞後には「国の恥を忘れず、中国を守ることを誓う」と発言。帰宅後には大切にしていた日本のキャラクターカードをハサミで切り刻んでしまったという。また、別の子どもは映画を見た後、地図に記された日本列島を必死に叩く様子が捉えられている。これらの動画がどのような意図で拡散されたのかは不明だが、映画の影響による反日感情の高まりが懸念されている。
中国江蘇省蘇州市で発生した日本人襲撃事件の現場付近
さらに、中国国内では襲撃事件も発生している。先月31日には江蘇省蘇州市で日本人の母子が襲われ、母親が負傷。翌日には地元当局が中国人と思われる容疑者の男を拘束したと報じられている。
まとめ
中国が「抗日戦争勝利80年」を国家的な重要イベントとして位置付け、愛国心を高めるキャンペーンを展開していることは、日中関係に新たな緊張をもたらす可能性を秘めている。特に、抗日映画の相次ぐ公開やそれに対する国民の反応、そして実際に発生した日本人襲撃事件は、中国国内における反日感情が改めて高まっている現状を示唆している。今後、日本政府及び在留邦人は、こうした動向を注視し、必要な対応を講じることが求められるだろう。