瀬戸内海小型船炎上、25名を救助:危機一髪の海上救助劇

2025年5月16日、高松市男木島沖の瀬戸内海で、小型船「第二十七むくじ丸」(19トン)が炎上する事故が発生しました。その場に居合わせた漁船「萬吉丸」の谷沢清隆船長(66)は、迅速な判断と行動で、第二十七むくじ丸に乗っていた乗員・乗客25名全員の命を救いました。本記事では、この海上での劇的な人命救助の全容と、谷沢船長の勇気ある行動に焦点を当てます。

突如の煙と炎上:船火災発生時の状況

「第二十七むくじ丸」は瀬戸内国際芸術祭のツアー客ら計25名を乗せ、高松港から豊島などを巡り戻る途中でした。夕方頃、機関室に繋がる通風筒から突然煙が上がり始めます。サワラ漁に向かっていた谷沢船長は数百メートル先に煙を上げる小型船を発見。「エンジンがやられたな」と凝視するうち、煙は白色に変わり、船内から激しい火柱が上がりました。

迅速な判断と行動:谷沢船長の決死の救助

炎上を目の当たりにした谷沢船長は「助けなくては」と直感。急いで自身の漁船「萬吉丸」を「第二十七むくじ丸」の真横につけました。小型船が間もなく沈没すると感じた彼は、枯れた声で「しゃんしゃんせい!(急いで!)」と叫び、乗客の救命胴衣をつかんで自船に引き上げました。緊迫した状況下、わずか10分ほどで25名全員の救助が完了。この迅速な対応が、全員の命を救う鍵となりました。

瀬戸内海で炎上し、火柱を上げる小型船「第二十七むくじ丸」の様子瀬戸内海で炎上し、火柱を上げる小型船「第二十七むくじ丸」の様子

定員を超える命の重み:操船の緊張と安全への尽力

「萬吉丸」の定員は12名ですが、25名の遭難者を追加で乗せたことで、船は大きく揺れ、僅かな波でも転覆する恐れがある極めて危険な状態に。「救助よりも緊張した」と谷沢船長は当時を振り返ります。彼は細心の注意を払って操船し、全員を男木島まで無事に送り届けました。この困難な状況下での冷静かつ的確な操船技術が、さらなる悲劇を防いだのです。

海上保安庁からの感謝状:勇気ある行動への称賛

谷沢船長の命がけの救助活動は高く評価され、海上保安庁の瀬口良夫長官から感謝状が贈呈されました。手渡しを行った冨田英利・高松海上保安部長は、「危険を顧みず救助した谷沢さんの判断力と行動力に敬意を表したい」と称賛。感謝状を受け取った谷沢船長は「誰だってあの場所にいたら助ける。たまたま自分がいただけ」と謙虚に語り、「誰も死ななくて良かった」と安堵の表情を見せました。

高松市で海上保安庁長官から感謝状を授与される谷沢清隆船長高松市で海上保安庁長官から感謝状を授与される谷沢清隆船長


今回の瀬戸内海での小型船火災事故における谷沢清隆船長の迅速かつ献身的な人命救助活動は、海上における緊急事態の対応において模範となるものです。一人の勇気ある船長の行動が25名の命を救い、尊い教訓と希望を与えました。彼の謙虚な言葉には、人命の尊さを重んじる深い思いが込められています。