【ワシントン=塩原永久】米民主党のペロシ下院議長は10日、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定の修正案で、トランプ米政権と合意したと発表した。昨年11月に米国とカナダ、メキシコが新協定に署名したが、民主党が労働者保護を強化する修正を求め、批准が遅れていた。批准により日本の自動車メーカーは事業環境の先行きが見通しやすくなる。
ペロシ氏は記者会見し、「米政権が提案した元の協定より格段によい内容になった」と自賛した。労働基準や環境保護対策が強化され、関係国に順守させる仕組みも強まったという。
トランプ氏はNAFTA見直しを公約に掲げ、協定見直し交渉の末、昨年11月末にカナダ、メキシコ首脳と署名した。下院多数派の民主党が修正を要求し、米政権と協議していた。
修正案を携えたライトハイザー米通商代表と、カナダのフリーランド副首相、メキシコのエブラルド外相らが10日、メキシコ市で協議。修正案に合意し、3カ国は再署名した。
新協定の批准に向けて、米下院は来週にも採決する方針だ。ただし上院の共和党指導部は、トランプ米大統領に対する弾劾訴追を終結させた年明け以降に採決する意向を示している。3カ国すべてが批准を終えれば約3カ月後に発効する。
新協定「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」は自動車関税をゼロとする基準を厳しくした。域内での部品調達比率を従来の62・5%から75%に引き上げ、労働者賃金が時給16ドル以上の工場での生産比率を40%以上とするなど、製造拠点の米国回帰を目指す内容となっている。