東京都の火葬料金高騰、中国資本が背景か?小池都知事も動向を注視

日本経済の中心地である東京・丸の内から発信される『文藝春秋』の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」が、東京都政を揺るがす喫緊の問題に光を当てています。23区内で深刻化する火葬料金高騰問題は、都知事の小池百合子氏も指導監督権限の強化を示唆するほどに事態は切迫しており、その背景にはある火葬場運営会社の動向と中国資本の影が見え隠れしています。本記事では、この問題の深層を掘り下げます。

「東京博善」の寡占状態と料金高騰

東京都23区における火葬場の事情は、歴史的な経緯から全国的にも特殊です。全国的には公営施設が大半を占める中、23区の全9カ所の火葬場のうち7カ所が民間施設であり、そのうち6カ所は「東京博善」(野口龍馬社長)が運営しています。この圧倒的な寡占状態が、料金設定に大きな影響を与えていると考えられます。

東京博善は2021年以降、段階的な値上げを実施してきました。その結果、一般的な火葬料金は全国平均の約1万円を大きく上回り、4年間で5割増の9万円にまで高騰しました。さらに、休憩室などの施設利用料も値上げされ、低料金で利用できる区民葬制度からも今年度をもって離脱することが発表されており、都民の経済的負担は増す一方です。

広済堂ホールディングスと中国資本の影響

こうした一連の値上げの動きは、東京博善の親会社である「広済堂ホールディングス」(常盤誠社長)に中国資本が参入して以降のことです。広済堂ホールディングスは、岸信介元首相の知己を得て大物フィクサーと称された櫻井文雄氏(通名・義晃)が印刷業者として設立した企業です。かつては出版業やゴルフ場開発も手掛け、1970年代後半にはプロ野球「クラウンライターライオンズ」の冠スポンサーを務めるなど、多角的な事業展開をしていました。

しかし、2004年に櫻井氏が死去した後、ゴルフ場開発で抱えた債務が重荷となり経営は迷走します。大量の株式を相続した櫻井氏の妻・美江氏と経営陣の間には溝が生じ、2019年には経営陣が非上場化を打ち出すも、村上世彰氏が対抗TOB(株式公開買い付け)を行うなど混迷を極めました。

小池百合子都知事、火葬料金高騰への対応に注目小池百合子都知事、火葬料金高騰への対応に注目

在日中国人実業家、羅怡文氏による株式取得の経緯

この経営の混乱期において、櫻井美江氏に接触し、受け皿会社を通じて2020年秋までに広済堂株の2割強を取得したのが、在日中国人実業家の羅怡文氏でした。羅氏による株式取得以降、東京博善の料金体系に変化が見られ始めたことは、多くの憶測を呼んでいます。

小池都知事がこの問題に対し、指導監督権限の強化を示唆している背景には、都民の生活に直結する火葬料金の高騰と、その背後にある資本関係への懸念があると言えるでしょう。

まとめ

東京都23区における火葬料金の高騰は、長年の歴史を持つ「東京博善」の寡占状態と、その親会社「広済堂ホールディングス」への中国資本参入という複雑な背景が絡み合って生じています。都知事もこの問題に注目しており、今後の都政の対応が待たれます。都民にとって不可欠なサービスである火葬が、一部の事業者の都合や外部資本の影響で高騰する現状に対し、どのような打開策が講じられるのか、その動向が注視されています。

文藝春秋編集部/文藝春秋 2025年12月号