国家公務員給与大幅引き上げ勧告の波紋:国民の不満と「民間並み」原則の検証

人事院が国家公務員の給与引き上げを勧告したことに対し、国民の間で不満と疑問の声が広がっています。特に、物価上昇が続く一方で賃金が追いつかない現状や、貧富の格差拡大といった社会課題が深刻化する中での大幅な給与増は、多くの国民にとって「勝ち組」である官僚組織への反発を招いています。財務省への風当たりが強まる中、今回の勧告が霞が関の「役人天国」再構築と捉えられかねない状況です。

1. 高水準の給与引き上げ勧告とその背景

人事院の川本裕子総裁は、2025年度の国家公務員給与について、行政職の月給を1万5014円(3.62%)引き上げるよう勧告しました。3%を超える引き上げ率は、バブル期の1991年以来の高水準です。当時の日本は好景気の余韻が残っていたのに対し、現在は国民の多くが生活困窮に直面し、物価上昇に賃金が追いつかない状況が続いています。7月の参議院選挙結果にも、国民の政府や官僚組織への強い不満が色濃く反映されています。

人事院勧告を受け取る石破茂首相と川本裕子人事院総裁。国家公務員の給与引き上げ問題を示す一枚。人事院勧告を受け取る石破茂首相と川本裕子人事院総裁。国家公務員の給与引き上げ問題を示す一枚。

にもかかわらず、国家財政の悪化や「国の借金」増加が止まらない中で、国民の減税を頑なに拒みながら公務員給与を大幅に引き上げる姿勢は、国民の怒りを買う結果となっています。これは、大赤字企業が大盤振る舞いで賃上げを行うようなものであり、国民からは自民党政権崩壊前の「駆け込み賃上げ」との疑念も抱かれかねません。

2. 「民間並み」原則の裏側にある比較基準の変更

公務員給与の引き上げは「民間並み」にするという建前が掲げられています。しかし、今回の人事院勧告では、その比較対象となる民間企業の規模に「姑息な細工」が施されたと指摘されています。従来「従業員50人以上」だった民間企業の比較基準を「100人以上」に変更。さらに、中央省庁の職員、すなわち霞が関の高級官僚については、「500人以上」から「1000人以上」の企業へと比較対象が変更されました。

この変更により、比較対象から中小規模の企業が外され、日本を代表するような優良企業、つまり給与水準の高い企業のみが選ばれることになります。結果として、行政職の平均月給は勧告通り引き上げられれば42万9494円となり、定期昇給分を合わせた賃上げ幅は5.1%にも達するといいます。また、ボーナスも年間0.05カ月分増えて4.65カ月分となります。大幅な賃上げを実現するために比較対象を変更したと批判されても、反論の余地がない状況です。

結論

今回の国家公務員給与の引き上げ勧告は、物価高騰と賃金停滞に苦しむ国民感情との乖離が顕著です。特に、比較対象企業の変更という「裏技」を用いたとされる「民間並み」原則は、国民の政府や官僚組織に対する不信感を一層強めることとなるでしょう。財政状況が悪化する中で、国民の納得が得られる透明性と公平性に基づいた公務員給与制度の運用が、今後ますます求められます。

参考資料