高市新首相の経済政策に市場は?「責任ある積極財政」の光と影

2025年10月21日、衆参両院の本会議において、高市早苗総裁が日本の歴史上初めてとなる女性首相に指名されました。この歴史的な瞬間に、政治的な不確実性の低下を背景に、日経平均株価は過去最高値を更新。週明けの27日には史上初の5万円を突破するという活況を見せました。しかし、その後株式市場は不安定な展開に転じ、多くの投資家は高市新政権の経済運営に対してまだ全幅の信頼を置けていない状況がうかがえます。アベノミクスの継承者を自認する高市首相の政策は、果たして日本経済を真に再生させ、私たちの生活を豊かに導くことができるのでしょうか。経済学者の視点から、その展望と課題を考察します。

女性初の首相に指名された高市早苗総裁、記者会見で経済政策の展望を語る女性初の首相に指名された高市早苗総裁、記者会見で経済政策の展望を語る

高市新首相誕生と金融市場の動揺

高市早苗氏の女性初の首相就任は、国内外から大きな注目を集めました。当初、この政治の節目は市場にポジティブな影響を与え、日経平均は一時的に急騰。日本の経済成長に対する期待が高まりました。しかし、その後の株価の不安定な動きは、単なる首相交代ではなく、その政策内容への懸念が市場に影を落としていることを示唆しています。投資家は、新政権が掲げる経済政策が、持続的な成長と安定をもたらすのかどうかを慎重に見極めようとしているのです。

「アベノミクス継承」を掲げる経済政策の全貌

高市政権が掲げる経済政策は多岐にわたりますが、当面の最重要課題は物価高騰への対策とされています。その中心となるのが、財政政策面からのアプローチです。具体的には、ガソリンやディーゼル油の価格引き下げ、電気・ガス料金の抑制、そして所得税の基礎控除見直しが挙げられます。さらに、給付付き税額控除の制度設計を進め、家計の負担軽減に努める方針です。首相は迅速な補正予算の編成と各種経済対策の実行を表明し、国民生活の支援を強化する意向を示しています。高市氏はこれを「責任ある積極財政」と呼び、歳出を増やすことで国民の生活を直接的に支えようとしています。

物価上昇率が名目賃金の伸びを上回る現状において、これらの政策が短期的には私たちの生活に一定のゆとりをもたらす可能性はあります。特に、エネルギー価格の抑制は、多くの家庭や企業にとって直接的な恩恵となるでしょう。

課題山積:物価高騰、人手不足、そして金融政策のジレンマ

しかし、高市政権の経済運営には複数の困難な課題が山積しています。まず、深刻なコメ価格の高騰への具体的な解消策は依然として不透明です。連立政権を組んだ日本維新の会は生産量1.5倍を主張する一方、自民党の鈴木憲和農相は慎重な姿勢を示しており、食料品価格への影響は大きいままです。また、飲食、宿泊、物流、建設、介護といった幅広い分野で深刻化する人手不足への明確な解決策もまだ示されていません。これらの問題は、構造的な物価上昇圧力となり、企業活動や国民生活に長期的な影響を与えかねません。

さらに、金融政策におけるジレンマも顕在化しています。高市首相は日本銀行の金利引き上げに反対の意向を示しており、低金利政策が継続すれば、為替市場で円安が一段と進みやすくなります。円安は輸入物価を押し上げ、物価上昇に歯止めがかからなくなるリスクをはらんでいます。一方で、「責任ある積極財政」の名のもとに国債が増発されれば、長期金利の上昇圧力が強まります。これは住宅ローン金利の上昇などを通じ、家計の負担を増やし、私たちの生活をさらに苦しめることにも繋がりかねません。

結び

高市新政権は、国民生活の安定と経済再生という大きな期待を背負っています。しかし、その経済政策には物価高騰への対応、構造的な人手不足の解消、そして金融政策との整合性という、複雑かつ困難な課題が横たわっています。短期的効果が期待される「責任ある積極財政」が、長期的な財政健全性や金融市場の安定とどのように両立していくのか、その手腕が問われることになります。高市首相にとって、今後、極めて難しい政策運営が求められることは間違いなく、その動向が日本経済の未来を左右するでしょう。

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