高市早苗首相は、トランプ米大統領との首脳会談を含む一連の外交日程を無事に終え、大手メディアの世論調査では60〜70%台という高い支持率で政権をスタートさせました。この「おもてなし外交」はメディアで大きく取り上げられ、トランプ大統領も終始ご満悦で、「ドナルド、サナエ」同盟の強固な絆が築かれたと報じられています。しかし、この外交の舞台裏には、日本の国際的評価に関わる重要な隠し事が存在する可能性が指摘されています。
政治評論家 古賀茂明氏の肖像。高市首相の外交政策を分析。
「ドナルド、サナエ」同盟の光と影
日米首脳会談における高市首相のトランプ大統領への接遇は、彼の機嫌を最大限に取ることに焦点が当てられました。メディアは「ドナルド、サナエ」同盟の固い絆が結ばれたと報じましたが、一方で「まるで日本が米国の奴隷になったようだ」と眉を顰める批判的な見方も少なくありませんでした。こうした批判の声は、高市首相自身も少なからず意識していたのかもしれません。その兆候は、ある重要な出来事から読み取れます。
隠されたノーベル平和賞推薦の意図
高市首相が2026年のノーベル平和賞候補としてトランプ大統領を推薦する意向を伝えたにもかかわらず、その事実を自ら発表しなかったことが注目されました。この件は、ホワイトハウスのレビット報道官によって公表されたものです。日本の記者による確認の求めに対し、木原誠二官房長官は、ノーベル委員会が審査資料を50年間公表しない慣例を理由に、推薦の有無に関するコメントを避けました。イスラエルのネタニヤフ首相やカンボジアのマネット首相などが公然と推薦を表明しているのとは対照的です。この対応は、高市首相自身が本件を「不適切ないし恥ずかしいこと」と考えている可能性を示唆しています。もし適切と考えていれば、堂々と認めるはずだからです。
ブラックジョークと外交上の失点
国際社会のルールを無視し、国内で人権侵害を繰り返す「民主主義の敵」であるトランプ氏を、太平洋戦争の過ちを認めようとしない「歴史修正主義者」と目される高市首相がノーベル平和賞候補に推薦するという事態は、まさに「ブラックジョーク」としか言いようがありません。もちろん、ノーベル委員会がこのような推薦を真剣に受け止めることはないでしょうから、この推薦自体による直接的な実害は少ないと見られます。しかし、日本の国際的な評価を大きく貶める外交上の失点となることは避けられないでしょう。
もう一つの「隠し事」:防衛費と米国製武器
政府が隠したいと考えていることは、このノーベル賞推薦の件だけではありません。マスコミの報道が一面的であるために、国民がまだ気づいていない「もう一つの隠し事」が存在します。以前のコラムで筆者は、「トランプ大統領は、防衛費をNATO並みのGDP比3.5%(関連インフラ整備などを合わせると同5%)に引き上げることや、米国製武器の爆買いを続けることなどを要求する可能性が高い」と指摘しました。さらに、「この要求については、要求される前に日本側が内々に自らそうしたいと申し出るという展開になる可能性の方が高い」とも言述しており、今回の首脳会談でそうした裏の合意が交わされた可能性も排除できません。
結論
高市首相の「おもてなし外交」は、トランプ大統領の機嫌を取り、表面的な成功を収めたように見えますが、その裏にはノーベル平和賞推薦を巡る情報隠蔽や、防衛費増強と米国製武器購入に関する国民に知らされていない合意の影が潜んでいる可能性があります。これらの「隠し事」は、日本の国際的評価を損ね、将来の防衛政策にも大きな影響を与えるでしょう。国民は、政府の外交政策における透明性と説明責任を強く求めるべきであり、隠された真実を注意深く見極める必要があります。
					




