高支持率で船出した高市内閣だが、その中で物議を醸しているのが「コメ問題」である。小泉進次郎氏(44)に代わり農林水産大臣に就任した鈴木憲和氏(43)が、その就任早々、“復古農政”とも呼べる方針を掲げ、専門家からは「コメの価格を下げる手を打たない」と指摘されている。この新農政に対し、小泉氏を農水相に抜擢した石破茂元首相(68)が「週刊新潮」の取材に応じ、大いなる反論を展開した。
鈴木農水相による「コメ対策」の方針転換
小泉前農水相は「コメ担当大臣」として、高騰する米価を抑制するため備蓄米の放出を積極的に行っていた。しかし、農水官僚出身で農林族でもある鈴木新大臣は、10月22日の就任会見でこの方針を大きく転換すると表明した。鈴木大臣は米価について「価格はマーケットの中で決まるべきものだ」と述べ、政府が積極的に関与しない考えを示した。さらに、小泉氏が米価高騰抑制のために放出した備蓄米についても、量が不足している時にのみ放出し、足りていれば出さないのが基本だとした。翌日の各社インタビューでは、小泉氏が発足させた「コメ対策チーム」についても、年内に解散する見通しを語り、前政権との明確な違いを打ち出した。
「需要に応じた生産」と減反政策の行方
鈴木新大臣は「需要に応じた生産」も主要な政策の一つとして掲げている。これは事実上、減反政策に終止符を打ち、「増産にかじを切る」という石破元首相の方針とも異を唱える形となった。高市内閣におけるこの新農政は、まるで「石破・小泉農政」を完全否定するかのような姿勢を見せている。
コメ問題で高市内閣の農政に反論する石破茂氏
専門家が指摘する「復古農政」の課題と食料安全保障
元農水官僚でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏は、鈴木大臣の方針について厳しく指摘する。「鈴木大臣が国は米価にコミットしないと述べたのは、高い米価を下げる手を打たないという意味です。」また、鈴木大臣が意欲を見せる「おこめ券」の配布は、減反補助金で米価を上げ、その財政負担で再度下げるという「マッチポンプ政策」に他ならないと批判。これは農林族にとっては“減反政策”を維持しつつ高い米価も維持でき、農協票を盤石にするための動きだと分析する。
しかし、山下氏は、「それでは有事の際に必要なコメの半分しか供給できません。食料の安定的供給の面からは大いに疑問です」と、日本の食料安全保障における深刻な課題を提起した。農水省や農協は「コメ余りが起きれば米価の暴落を招く」として減反を続ける理由を説明するが、この問題は、EUなどで行われているように、主業農家に所得補償として直接支払いをすれば解決すると山下氏は提案する。実際に、石破元首相は、小泉氏を農水相に据えて減反廃止への方針転換を実行させようとしており、消費者が安いコメを買えるようにするため、かねてより主業農家への直接補償を検討していたという。
結論
高市内閣下における鈴木農水相の新たな「復古農政」は、前政権の小泉・石破両氏が推進した政策とは一線を画している。特に米価への政府関与の抑制、備蓄米の運用方針の変更、そして減反政策に対するアプローチの違いは、日本の農業政策の方向性を大きく左右する可能性を秘めている。この方針転換が、高騰する米価に苦しむ消費者、そして日本の食料安全保障にどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目される。





