河井案里氏、著書『天国と地獄』で明かす事件の深層と夫婦の絆

2019年の参院選を巡る大規模買収事件で、公職選挙法違反(買収)の罪により執行猶予付き有罪判決を受けた河井案里氏(51)が、手記『天国と地獄』(幻冬舎)を出版しました。元法相の夫・克行氏(62)が実刑判決を受け、夫妻が政界を去って5年。本書は、政治家の妻として逮捕・収監された夫との日々を詳細に綴っています。本記事では、河井案里氏が「事件」を振り返り、夫・克行氏との関係性について語った内容に迫ります。

有罪判決確定後、河井氏は外出が制限され、家族の買ってきたケーキを食べ続けた結果、4年間で20キロも体重が増加したと語ります。現在の取材の場では、紺色のノースリーブのツーピース姿で現れ、レストランで「共食い」と笑いながらトンカツを選ぶ一幕もありました。

有罪判決確定後、都内のレストランで取材に応じる河井案里氏。紺色のツーピース姿で、体重が増加したと語る。有罪判決確定後、都内のレストランで取材に応じる河井案里氏。紺色のツーピース姿で、体重が増加したと語る。

書籍『天国と地獄』執筆の舞台裏

手記『天国と地獄』の出版は、当初夫・克行氏の刑務所経験を本にできないかという提案から始まりましたが、最終的に河井氏自身の執筆となりました。昨年春に書き始めましたが、感情的な苦痛から筆が進まず、結局1年以上を要したと明かしています。

本書には夫婦関係、実家、自身の病気、逮捕の裏側まで詳細に語られ、克行氏も巻末で驚きを記すほどです。河井氏は、事件描写には地元広島の政治構造や自民党内の派閥抗争にも触れざるを得なかったと強調。県議時代の経験から、事件が地方の権力争いの延長線上にあると認識していたためです。「触れてほしくないことも実名で書いています。都合の悪いことも書かなければフェアではない」と語り、徹底した事実開示の姿勢を示しています。

克行氏との結婚生活と精神的苦悩

克行氏との出会いは、夫が2000年の衆院選での2度目の落選後。河井氏は結婚前から夫の家族との関係に苦悩し、結婚式の2日後には実家に逃げ帰った経験も告白。「結婚ってなんてつらいことだろう」と感じたと明かします。広島に戻った後、うつ病を発症し、20年もの長期にわたり治療を続けたといいます。

夫の後援会や当選に対する責任感から、「我慢しなければ」という思いに縛られました。「政治家の妻は古臭い価値観の中にあり、自分もがんじがらめだった」と当時の重圧を回顧しています。

刑務所での夫との面会と心の支え

克行氏が栃木県内の刑務所に収監されてからは、河井氏は広島から往復7時間かけて月に3回、1回30分の面会に通い続けました。その目的は「夫が心の支えを失わないように」という一心からでした。

河井氏は、ヴィクトール・フランクル『夜と霧』の教えのように、「自由と人権が厳しく制限される施設にいる者は、どう生きていきたいかというビジョンを持たなければ自分を保てない」と語ります。この言葉は、夫の精神的健康を支える面会の重要性を強く示しています。

結論

河井案里氏は、公職選挙法違反事件を巡る苦難を経て、自身の経験と心情を綴った手記『天国と地獄』を出版しました。本書には、政治家キャリアの裏側、夫婦関係の複雑さ、心の病との闘い、そして夫・克行氏への深い精神的支援が赤裸々に描かれています。この一冊は、事件の深層だけでなく、一人の人間の葛藤と回復の物語として、読者に多くの示唆を与えるでしょう。

参考資料