8月8日に日本公開された「ジュラシック」シリーズ最新作『ジュラシック・ワールド 復活の大地』は、公開初週末の3日間で興行収入11億円超えを記録し、2025年公開の洋画作品で最速となる10億円突破を達成するなど、まさにロケットスタートを切りました。この大ヒットの裏で、日本語吹き替え版を巡るある“不安要素”が浮上し、SNS上では連日のように厳しい意見が寄せられています。特に、ハリウッド女優スカーレット・ヨハンソンの吹き替えを担当した女優・松本若菜の演技に対して、「棒読み」との酷評が相次ぎ、その波紋が広がっています。
映画『ジュラシック・ワールド 復活の大地』の公式ポスター。恐竜が特徴的な大ヒットSFアクション映画であり、その日本語吹き替え版も注目を集めている。
期待と裏腹の「棒読み」指摘:SNSで拡散される不満の声
『ジュラシック・ワールド 復活の大地』の圧倒的な興行成績は、シリーズの根強い人気と最新作への期待の高さを示しています。しかし、その一方で、SNS、特にX(旧Twitter)では、日本語吹き替え版に対する不満の声が後を絶ちません。多くの視聴者が共通して指摘しているのが、松本若菜が演じるスカーレット・ヨハンソン演じる元特殊工作員ゾーラのセリフ回しです。
実際に投稿された意見の中には、「全く抑揚がなくてずっと棒読みなのが気になった」「ゾーラが無感情なキャラなのかと思ってしまうレベル」「プロの声優にやらせないのはなぜ?」といった具体的な批判が目立ちます。また、過去にスカーレット・ヨハンソン演じるブラック・ウィドウの日本語吹き替えを長年担当してきた米倉涼子の声に慣れ親しんでいたファンからは、「アベンジャーズ ナターシャの吹き替え米倉涼子になれすぎて 今回の松本若菜なんだけで違和感ヤバイ」という比較論も提起されており、期待とのギャップが大きく響いていることがうかがえます。これらの声は、映画の緊張感を損ない、作品への没入感を妨げたという、視聴者の切実な思いを反映しています。
人気芸能人が集結した吹き替えキャストとその挑戦
本作『ジュラシック・ワールド 復活の大地』の日本語吹き替え版では、松本若菜の他に、キーマンとなるヘンリー・ルーミス博士役に三代目 J SOUL BROTHERSの岩田剛典、さらにはお笑い芸人のやす子や若手女優の吉川愛といった、多岐にわたるジャンルの人気芸能人が声優として起用されています。
特に、女性主人公の吹き替えは「ジュラシック」シリーズ初の試みであり、松本若菜にとっては今回の作品が映画の吹き替え初挑戦となりました。彼女は、抜擢された際の心境について、7月1日に行われたイベントで「お話をいただいた時、『え?私ってどういうこと?』ってすぐに理解できませんでした。でも、この作品の吹替をさせていただく。しかも新章で、ということは心からうれしかったですし、身の引き締まる思いでした」と語っており、並々ならぬ意気込みで臨んだことが伺えます。2022年のドラマ『やんごとなき一族』での演技で大ブレイクし、近年はドラマや映画に引っ張りだこの人気女優である松本。その気合や奮闘を称える一部の声もあがっているものの、全体的な評価としては、前述の通り酷評が優勢な状況です。
「不幸なマッチング」が招いた評価の乖離:専門家と視聴者の見解
なぜこのような評価の乖離が生じたのでしょうか。実際に日本語吹き替え版を鑑賞した30代女性は、「とにかく最初から最後まで、セリフの読み方がずっと同じトーンで抑揚がないのでどうしても“棒読み”に感じてしまいました。松本さん演じるゾーラは、普段はクールなのですが、危険な場面ではリーダーシップを発揮するというキャラクターだったため、演技のトーンが同じだと松本さんの声だけがすごく浮いて聞こえてしまうのです。松本さんの演技力がどうというよりも、松本さんのキャラクターがスカーレット・ヨハンソンならびにゾーラのキャラクターとうまくマッチしていなかった印象を持ちました」と具体的な感想を述べています。
この「不幸なマッチング」が起こった原因について、ある映画関係者は複数の要因を指摘します。一つは、スカーレット・ヨハンソンの声にまつわる視聴者の強い固定観念です。彼女の代表作であるマーベル映画のブラック・ウィドウ役の日本語吹き替えを、一貫して米倉涼子が担当してきたことから、「スカーレット・ヨハンソンの声=米倉涼子」というイメージが多くの人々に定着しています。そのため、このイメージが強い視聴者にとっては、新たな声優である松本若菜の声がより一層違和感として感じられた可能性が高いと分析します。
さらに、今回の『ジュラシック・ワールド』では、脇を固めるキャラクターの吹き替えを、楠大典、小野大輔、高山みなみといった錚々たるプロの声優陣が務めていました。彼らの高度な演技スキルとプロフェッショナルな表現力と並ぶことで、吹き替え初挑戦である松本若菜の演技が相対的に「浮いて見える」のは、ある意味で避けられない状況だったと言えるでしょう。映画関係者は、「有名作品の吹き替えに、芸能人を起用することは長年続いてきていますが、相性を適切に見極めないと、関わった人が誰も得をしないという不幸な事態が生まれてしまうのではないでしょうか」と述べ、芸能人起用の難しさとその影響について警鐘を鳴らしています。
今後の課題と松本若菜への期待
今回の吹き替え挑戦について、松本若菜自身は「今回はスカーレット・ヨハンソンさんが演じている気持ちを読み取りつつ、でも彼女にあまり引っ張られ過ぎないよう演じました」と語っていました。彼女なりに役作りに取り組んだことがうかがえますが、結果的には厳しい評価に直面することになりました。
『ジュラシック・ワールド 復活の大地』の大ヒットは紛れもない事実であり、作品自体への関心は非常に高いです。しかし、その日本語吹き替え版が一部の視聴者に与えた負の印象は、今後の映画界における芸能人起用のあり方、そして吹き替え版制作の戦略に一石を投じることとなるでしょう。松本若菜には、今回の経験を糧に、今後さらに研鑽を積み、吹き替えという新たな分野で「自分だけのカラー」を見つけ、その表現力を確立していくことが期待されます。
参照元: https://news.yahoo.co.jp/articles/aeddce973e318915f6f8ce82f20fe4de377122f4