エスワティニ、米国追放不法移民犯罪者受け入れで違憲訴訟に直面

アフリカ南部の小国エスワティニ(旧スワジランド)で、政府が米国から第三国へ追放された不法移民犯罪者を受け入れたことに対し、市民社会団体が最高裁判所に違憲訴訟を提起しました。この問題は、エスワティニ国内の憲法上の懸念だけでなく、隣国南アフリカ共和国の安全保障にも影響を及ぼすとして、国際的な注目を集めています。

エスワティニ政府への違憲訴訟の提起

2025年8月14日、エスワティニ国内の三つの法律・市民社会団体が、自国政府が米国からの不法移民犯罪者を受け入れたことについて、最高裁判所に違憲訴訟を提起しました。彼らは、この受け入れ合意の条件が国民や議会に開示されず、十分な協議も行われていない点を問題視し、憲法違反であると主張しています。これらの団体は、提訴発表の声明の中で、「この合意が締結された状況は、行政権の乱用、人権侵害、そして国家安全保障に関わる深刻な懸念を抱かせる」と述べ、政府の透明性と説明責任の欠如を強く非難しています。

米国による不法移民犯罪者の第三国追放とその実態

今回エスワティニが受け入れたのは、ベトナム人、ラオス人、イエメン人、キューバ人、ジャマイカ人の計5名です。彼らは米国で殺人などの有罪判決を受け、出身国への送還を拒否された不法移民犯罪者とされています。米国による出身国とは異なる第三国への不法移民追放計画の一環として、この5名は2025年7月に米軍機でエスワティニへと追放されました。声明によると、米国側が「あまりにも野蛮過ぎて、祖国に受け入れを拒否された」と評するこれらの人物は、現在、エスワティニ国内の最高警備レベルの刑務所に収容されています。この刑務所は既に収容率が171%と定員を大きく上回っており、過密な環境での独房服役は、さらなる人権上の懸念を生んでいます。

エスワティニの違憲訴訟に関連するドナルド・トランプ前米大統領エスワティニの違憲訴訟に関連するドナルド・トランプ前米大統領

南アフリカ共和国からの強い懸念

エスワティニの隣国である南アフリカ共和国は、この犯罪者受け入れに対し、先週強い抗議の意思を表明しました。南アフリカ政府は、受け入れられた5名の詳細な経歴と、彼らが南アフリカの安全保障に与える潜在的な「悪影響」について深刻な懸念を抱いていると述べています。これは、地域全体の安全保障と、国境を越えた犯罪行為のリスク増大に対する懸念を示唆しており、エスワティニの決定が周辺国との関係にも波紋を広げていることを浮き彫りにしています。

今回のエスワティニでの違憲訴訟は、米国が推進する不法移民追放政策が、受け入れ国に法的な課題と社会的な懸念をもたらす可能性を示しています。人権、国家安全保障、そして国際関係の複雑さが交錯するこの問題の今後の進展が注目されます。


参考文献

  • AFPBB News / Yahoo News Japan (2025年8月15日). エスワティニ、米国から追放の不法移民犯罪者受け入れで違憲訴訟に直面.