来る8月25日、ホワイトハウスで李在明氏とドナルド・トランプ元大統領との首脳会談が予定されています。この重要な会談を控え、ワシントンの韓半島専門家であるアメリカン・エンタープライズ研究所のザック・クーパー・シニアフェローは、「最上の結果が韓米関係に実質的改善をもたらす可能性は低いが、最悪の結果は深刻な関係悪化を招きかねない」と指摘し、「リスクは高く報償は少ない(high risk, low reward)訪問になる可能性が高い」と警告しています。これは、従来の「失敗した二国間首脳会談はない」という外交界の格言が、トランプ氏を相手にする場合には通用しないことを示唆しています。
「外交の常識」が通用しないトランプ氏のスタイル
これまでの首脳会談では、実務レベルで意見調整が行われ、合意に至れば両国首脳が共同声明などで発表するのが通例でした。しかし、過去7カ月間にホワイトハウスで行われた外交イベントを振り返ると、トランプ氏の外交は予測不能な展開を見せ、一部の会談は「外交惨事」と評されています。城南市長時代を含め、約10年ぶりにワシントンを訪れる李氏にとって、今回の訪米は非常にタフなものになるかもしれません。
ウクライナのゼレンスキー大統領との衝突
その代表的な例が、今年2月28日に開催されたウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領との会談です。両首脳はウクライナ戦争の解決策を巡って意見の相違を見せ、トランプ氏だけでなく、J・D・バンス副大統領やマルコ・ルビオ国務長官らが加わり、「無礼だ」「感謝を知らない」とゼレンスキー大統領を強く非難する場面がありました。現場に居合わせたメディア関係者やインフルエンサーからも「なぜ正装しないのか」「私たちを尊重していないのか」といった批判的な質問が投げかけられるなど、会談の雰囲気は険悪そのものでした。ゼレンスキー大統領が通訳なしで、流暢とは言えない英語で「1対多」の議論を繰り広げた結果、予定されていた夕食会はキャンセルされ、締結されるはずだった鉱物合意も実現しませんでした。この「外交惨事」の後、ゼレンスキー大統領が再びトランプ氏の心象を回復させるまでには、かなりの時間を要したとされています。
李在明氏とドナルド・トランプ元大統領の会談の様子
南アフリカのラマポーザ大統領に対する「メディア攻撃」
今年5月21日のトランプ氏とシリル・ラマポーザ南アフリカ共和国大統領との首脳会談も、トランプ外交の異例ぶりを示す象徴的な事例として語り継がれています。会談前からトランプ氏は「南アフリカ国内の白人に対する人種差別」問題に言及し、南アフリカが議長国を務める今年10月のG20会議もボイコットする可能性を示唆していました。ラマポーザ大統領は、ゴルフを愛好するトランプ氏の好みに合わせ、伝説の南アフリカ出身プロゴルファー、アーニー・エルスを帯同してホワイトハウスに現れました。しかし、トランプ氏が予告なく「白人農夫集団殺害」の捏造動画を流したことで事態は一変します。流された動画は事実ではなく、関連報道のほとんども虚偽であることが確認されましたが、トランプ氏の面前では「嘘か本当か」は重要ではなく、ラマポーザ大統領はこれについて釈明に追われる羽目になりました。南アフリカ現地メディアは、これをトランプ氏による「奇襲攻撃」であり、「マルチメディアの待ち伏せ」と表現しています。この出来事は、トランプ氏との会談を控えていた主要国の外交官らに大きな衝撃を与えたと報じられています。
米韓首脳会談への示唆
これらの過去の事例は、トランプ氏との外交がいかに予測不能であり、伝統的な外交プロトコルが通用しない可能性があるかを明確に示しています。李氏とトランプ氏との首脳会談もまた、同様のリスクを抱えていると言えるでしょう。単なる形式的な会談に終わるのか、それとも予期せぬ展開を見せるのか、国際社会は注目しています。今回の会談は、李氏にとってトランプ氏の予測不能な外交スタイルを乗りこなすという、極めて困難な試練となる可能性があります。
参考資料:
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/d3238e47da1931ef7b644be9bc4ff1e9afdca3bd
- 朝鮮日報日本語版