ウィスコンシン州でプラスチック容器が頭に挟まったクマ、1週間以上の苦難を乗り越え奇跡の救出

米ウィスコンシン州北部で、頭にプラスチック容器がはまった状態で1週間以上も生き延びた2歳の子グマが、関係機関と地元住民の緊密な協力により無事に救出され、森へと帰されました。この感動的な救出劇は、野生動物の保護と人間社会の共存における重要な教訓を示しています。

80キロを移動、難航した追跡調査

ウィスコンシン州自然資源局(DNR)の報告によると、この若いクマはプラスチック容器を頭にかぶったまま、ベイフィールド郡、ダグラス郡、ソーヤー郡の3つの郡をまたぎ、約80キロメートルもの距離を移動しました。7月下旬から複数の地域で繰り返し目撃情報が寄せられていましたが、米国農務省(USDA)野生動物サービスとDNRは、通報を基に罠を設置し、追跡を続けたものの、その捕獲は極めて困難を極めました。

ウィスコンシン州でプラスチック容器が頭にはまったクマを救助する様子ウィスコンシン州でプラスチック容器が頭にはまったクマを救助する様子

住民の通報が転機に:麻酔銃を用いた慎重な救助活動

事態が大きく動いたのは8月3日です。「プラスチック容器をかぶったクマが庭にいる」という住民からの緊急通報が入り、直ちに現場へ向かったDNR職員は、住民の安全を確保した上で、慎重に麻酔銃を使用してクマを眠らせました。その後、頭部を覆っていた硬いプラスチック容器を丁寧に切除し、呼吸や視界が妨げられていないかを細かく確認。外傷や衰弱の度合いを検査した結果、健康状態に問題がないことが確認されたため、食料と水が豊富な安全な森へと移送され、無事に放たれました。

困難を乗り越えたクマと専門家の声

この救出活動に関わった動物保護協会のジェイミー・モーリー氏は、CBS Newsに対し「今週の初めは、このクマは助からないだろうと思っていました。しかし、生きていて、頭から容器が取り除かれた姿を見て、本当に喜びました」と語りました。また、DNRのランディ・ジョンソン氏は、「このような野生動物の事故は時折発生します。クマだけでなく、シカの場合もあります」と説明。さらに、「容器がはまっていた正確な期間は不明ですが、今は森の食料が最も豊富な時期であり、冬までに健康を取り戻す時間は十分にあるため、回復の見込みは高いです」と述べ、クマの未来に期待を寄せました。

回復への期待と環境保護への警鐘

救出された際、クマの体重は約32キロと、同年齢の夏の平均体重である45〜68キロを大きく下回っていました。しかし、外傷はなく、健康状態は良好でした。容器がはまったままでも、頭を水に浸して飲むことはできていたと推測されています。放された直後には、近くのベリーを食べ始める姿が確認されました。DNRとUSDAは、追跡中に情報を提供してくれた住民に深く感謝の意を表し、このクマには識別用の耳タグが装着されました。ジョンソン氏は、Independent紙に対し、「野生動物はゴミをあさる際に容器などに頭がはまることが多いため、生息地近くの住民にはゴミの適切な管理を徹底してほしい」と改めて注意を呼びかけました。この事例は、私たち人間がゴミを適切に管理することの重要性を改めて浮き彫りにしています。


参考文献

  • HuffPost Japan
  • CBS News
  • Independent