先の参院選で勢いを増した参政党は、数多くの批判やスキャンダル報道に晒されながらも、その強固な支持基盤と組織力を維持しています。新興政党としては異例のこの現象は、一体なぜ起きているのでしょうか。経営学者の舟津昌平氏は、経営組織論の観点から、参政党が「メンバーシップ」を重視している点に注目し、その独自性を分析しています。
参院選で躍進した参政党の神谷宗幣代表(中央)と当選者、国会議員たち。党の組織力を象徴する一枚。
参政党が明確に示す「党員の役割」
参政党の躍進は、その卓越した組織力に起因するとしばしば指摘されます。全国47都道府県に280以上の支部を設置し、150名を超える地方議員を擁する体制は、既存政党と比較しても遜色ないほどです。神谷宗幣代表の演説における発言や複数のスキャンダルが物議を醸す中でも、党組織の勢いが衰える兆しは見られません。これは、党員やサポーターを強力に結束させる独自の仕組みが存在することを示唆しています。
舟津氏の専門分野である経営組織論によれば、参政党の成功の鍵は「メンバーシップ」への注力にあるといいます。各政党の公式サイトを比較すると、参政党が党員やサポーターに対して「何をすべきか」という役割を非常に具体的に提示していることが顕著です。入党募集ページでは、「一緒に学び合う党」という理念を掲げ、独自の配信コンテンツでの学習や社会活動への積極的な参加を呼びかけています。これは、他の政党が党員募集ページで具体的な行動を促すよりも、参政党が党員を単なる票集めの対象としてではなく、組織を協働して支えるコミュニティの一員として捉えていることの証左です。
メンバーシップがもたらす「組織化」の力
メンバーシップの重視がなぜ重要なのか、それは集団を「組織化」する力を持つからです。組織論において、「集団」と「組織」は明確に区別されます。経営学者バーナードは、組織が成立するために不可欠な要件として「共通目的」「協働意欲」「コミュニケーション」の三つを挙げました。参政党は、党員やサポーターに明確な役割と共通の目標を与えることで、これらの要件を見事に満たしています。
業界団体や特定の支援組織に依存することなく、ボランティアを中心に全国規模で選挙運動を展開できるのは、まさに党員の高度な「組織化」が成功しているからに他なりません。この組織化された強固な基盤こそが、参政党が批判に晒されながらもその勢いを維持し続ける要因となっているのです。
結論
参政党が数々の逆風にも関わらずその勢力を拡大し、維持できている背景には、経営組織論でいう「メンバーシップ」を徹底的に重視し、党員を単なる支持者ではなく「協働するコミュニティの一員」として組織化することに成功しているという独自の戦略があります。この組織化された力が、今後の日本の政治動向にどのような影響を与えるか、引き続き注目されます。
参考資料
- President Online: なぜ参政党は批判とスキャンダルに晒されても「組織の勢い」が衰えないのか
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/3e87b854a06ac9c68726ae480d5c8187033d2ea0