「2025年7月に日本で大災難が起きる」という根拠不明の噂が、日本国内だけでなく中華圏、特に香港で大きな波紋を広げています。この噂の影響により、香港から日本への観光客が激減し、それに伴い「北上消費」と呼ばれる社会現象が加速していることが、中華圏に詳しいジャーナリストの中島恵氏によって指摘されています。日本の観光業、特に地方経済にとって、この観光客減少がもたらす経済的打撃は無視できない規模に達しており、その背景と具体的な影響について深く掘り下げていきます。
「日本大災難」の噂、香港での広がりとその起源
「2025年7月に日本で大災難」という噂は、たつき諒氏の漫画『私が見た未来 完全版』(飛鳥新社)に記された著者の予知夢が発端となりました。この話はSNSを通じて日本中で大きな話題となりましたが、香港ではさらに地元の有名風水師がこの夏に日本で災難が起こると予測したため、両方の影響が相まって日本への旅行を取りやめる人が続出しました。
予知夢漫画『私が見た未来 完全版』の表紙。2025年7月の日本大災難の噂が香港での訪日観光客減少に影響を与えている。
航空便の減便と日本の地方経済への打撃
この噂の影響は絶大で、特に格安航空会社(LCC)の日本便における減便が相次いでいます。香港航空は5月以降、福岡、名古屋、札幌便などを減便し、鹿児島便は10月まで運休。グレーターベイ(大湾区)航空も5月から徳島便を減便、9月からは運休が決定し、米子便も8月末から運休予定と発表されました。一方で、キャセイ・パシフィック航空や日本航空、全日本空輸などの大手航空会社の減便はほとんどありませんでした。しかし、香港から日本の地方都市への定期便が軒並み減便となったことは、インバウンド需要に大きく期待する日本の地方経済にとって深刻な痛手となっています。
香港からの訪日観光客の重要性と経済的損失
香港からの訪日観光客は、日本にとって非常に大きな存在です。日本政府観光局が7月16日に発表した今年上半期の訪日外国人客数は累計約2151万8100人で、前年同期比を約370万人上回りました。国・地域別で見ると、韓国、中国、台湾、米国に次いで香港が5位にランクインしています。2024年の暦年データでは、累計約3687万人の訪日客のうち約268万人が香港からで、香港の人口約740万人の3分の1が日本を訪れている計算になります。今年上半期は香港から約127万人でしたが、フライト減便などの影響が最も顕著に現れると予測される7月、8月を経て、今年下半期の総数は昨年の総数をかなり下回ると見られています。
観光庁による「訪日外国人の消費動向」(2024年)を見ると、旅行消費額の多い国・地域別では、中国、台湾、韓国、米国に次いで香港が5位で、その旅行消費額は約6606億円と全体の8.1%を占めています。1人当たりの旅行支出も24万8882円と高水準です。単純な比較はできませんが、昨年の旅行消費額から仮に今年3割減少した場合、日本にとって約2000億円もの損失が発生すると考えられ、その経済的影響は計り知れません。
「2025年7月日本大災難」という噂は、単なるSNSの話題に留まらず、香港からの訪日観光客の激減という具体的な形で日本の経済に影響を及ぼしています。航空便の減便は地方経済にとって大きな打撃となり、推定される経済損失は甚大です。同時に、香港では日本旅行の代替として、中国本土への「北上消費」が加速しており、この現象は国際的な観光市場の動向、そして日本へのインバウンド戦略に再考を促すものと言えるでしょう。