ガザ壊滅的飢餓:栄養失調蔓延、食料求める住民にイスラエル軍発砲

パレスチナ自治区ガザでは、国連機関「総合的食料安全保障レベル分類」(IPC)が壊滅的飢饉拡大を予測する中、深刻な栄養失調に苦しむ住民が満足な治療を受けられない状況が続いている。食料配布所には絶望した人々が殺到するが、イスラエル軍による発砲が相次ぎ、危険ゆえ通いをためらう住民も多い。「飢餓は広がり、誰もが飢えている」と彼らは窮状を訴え、国際社会に現状への注目を呼びかけている。

深まるガザの人道危機:食料不足と住民の窮状

南部ハンユニスのナセル病院では、重度栄養失調と腎臓疾患に苦しむムハンマド・ゼノヌさん(21)が衰弱している。その傍らで、母サミーラさん(45)は、病院には薬、食料、清潔な水が不足しており、息子がただ横たわっているだけだと窮状を訴えた。ゼノヌさん一家は、かつて援助物資のこぼれたレンズ豆を拾ったり、近隣からの施しを受けたりして命をつないできたが、今ではそれも尽き、他の3人の子供たちも栄養失調に陥っているという。

ガザ南部ハンユニスのナセル病院で重度の栄養失調に苦しむムハンマド・ゼノヌさんガザ南部ハンユニスのナセル病院で重度の栄養失調に苦しむムハンマド・ゼノヌさん

国連の報告によると、ガザでは耕作地の98%が戦闘で被害を受けるか戦闘地域となり、作物を育てられない。また、イスラエル軍に撃たれる危険があるため沖合での漁業も不可能だ。市場には肉や野菜、卵がほとんどなく、仮にあったとしても高価で一般住民には手が出せない。このため住民は、軍検問所を通る支援物資に頼らざるを得ないが、イスラエル当局は5月末に本格的な搬入を再開してからも十分な量を認めず、食料不足は慢性的に続いている。イスラエルと米国が主導する「ガザ人道財団」(GHF)の食料配布所では、イスラエル軍が「部隊に接近した」などの理由で住民に発砲。銃撃による死者が相次ぎ、老人ら弱者は危険を冒してまで物資を受け取れない。夫と娘の夫が行方不明のインティサール・ハムスさん(64)は、「私たち家族には危険を冒して食料を取りに行く男性がいない」と嘆いた。

ハンユニスの学校に避難するヤメン・シャライエルさん(45)の6歳の娘サマハちゃんは、やせ細って動けなくなり、話すこともできない。ヤメンさんは子供たちのために命がけでGHFの配布所へ食料を取りに行くこともあるが、十分な量を得られることは稀だ。「イスラエルがしていることはガザ住民への緩慢な殺害だ。私たちはゆっくりと飢えて死んでいる」と、彼はこの惨状を訴えた。

パレスチナ自治区ガザ市とハンユニスの位置関係を示す地図パレスチナ自治区ガザ市とハンユニスの位置関係を示す地図

結論:国際社会へ緊急支援を

ガザ地区の住民は、食料、水、医薬品の深刻な不足に加え、戦闘行為や物資搬入の制限、そして支援物資配布所での暴力といった多層的な危機に直面している。子どもたちが栄養失調で衰弱していくこの壊滅的な状況に対し、国際社会は速やかに介入し、ガザ住民への十分な人道支援を確実なものとし、安全な物資搬入・配布ルートを確保するための緊急行動を強く求めるものである。


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