広島吉和の森ゴルフ倶楽部、メガソーラー転用で閉鎖へ – 従業員・会員が反発、水源への影響も懸念

標高800メートルを超える高地に位置し、「西の軽井沢」として親しまれてきた「広島吉和の森ゴルフ倶楽部」(広島県廿日市市)が、今年12月をもって閉鎖される方針であることが明らかになりました。この閉鎖の背景には、広大な敷地を大規模太陽光発電所(メガソーラー)へ転用する計画が存在しており、従業員や会員からは強い反発の声が上がっています。特に、地域の貴重な水源である太田川にほど近い立地から、環境への影響を懸念する声も少なくありません。

突如浮上した閉鎖計画と従業員の反発

広島市中心部から車で約1時間の清流沿いに位置する同ゴルフ倶楽部は、日本プロゴルフ界の礎を築いた中村寅吉氏が設計した歴史あるコースです。2021年に現在の運営会社へ事業譲渡されて以来、地元住民やゴルフ愛好家にとって憩いの場となってきました。しかし、今年1月頃から地元でメガソーラー計画の噂が広がり始め、従業員が土地登記簿を調査した結果、昨年12月には運営会社が福岡市の太陽光発電事業者と売買契約を締結していたことが判明。さらに今年3月には、売買代金完済を条件とした所有権移転の仮登記も行われていました。

従業員らはこれらの事実を一切知らされないまま計画が進められていたことに強く反発。今年4月には労働組合を結成し、運営会社との団体交渉を模索していましたが、7月末に突如、ゴルフ倶楽部のホームページ上で12月15日での閉鎖方針が公表されました。関係者によると、土地取引額は相場を上回る10億円程度とみられており、会社社長の利益優先の姿勢が指摘されています。

広島県廿日市市「広島吉和の森ゴルフ倶楽部」入り口に掲げられた、閉鎖とメガソーラー建設計画への反対を訴える横断幕。広島県廿日市市「広島吉和の森ゴルフ倶楽部」入り口に掲げられた、閉鎖とメガソーラー建設計画への反対を訴える横断幕。

会員に広がる不信感と預託金問題

ゴルフ倶楽部側が会員向けに示した閉鎖案内では、訪日外国人客(インバウンド)の来場者数が想定を下回り、2024年3月期の決算で約2千万円の赤字を計上したことが理由とされています。しかし、昨年11月の理事会では、運営会社社長の張聖培氏が「増収増益」を説明していたこともあり、会員の間では経営状況に関する不信感が広がっています。

会員にとって、慣れ親しんだコースでのプレーができなくなることは大きな痛手であり、預託金が返還されるかどうかの単純な問題だけではありません。ゴルフ場が太陽光パネルに転用されれば、その場所でのゴルフ継続は不可能となり、長年の愛着や地域コミュニティとしての価値が失われることへの懸念が強まっています。

太田川水源地近く、環境への懸念

同ゴルフ倶楽部は、広島の豊かな恵みを支える太田川の水源に非常に近い場所に立地しています。このため、大規模な太陽光発電施設への転用は、周辺地域の生態系や水質、土砂災害リスクなど、環境への影響が懸念されています。山間部のゴルフ場をメガソーラーに転用する際には、広範囲な森林伐採や造成工事が伴うことが多く、地元住民や環境保護団体からは、慎重な環境影響評価と透明性の高い説明を求める声が上がっています。

結び

「広島吉和の森ゴルフ倶楽部」の閉鎖とメガソーラー転用計画は、経営者の利益と、従業員の雇用、会員の権利、そして地域環境保全という多岐にわたる問題が複雑に絡み合っています。関係者への説明不足や、事前の情報開示の欠如が、従業員や会員の強い反発を招いている現状は、今後の企業活動における透明性と地域社会との共存の重要性を改めて浮き彫りにしています。太田川水源地という敏感な環境下での大規模開発は、その影響を慎重に見極める必要があります。


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