昨年、再選を果たした斎藤元彦兵庫県知事との協力関係が注目された竹内英明元兵庫県議会議員が自ら命を絶った事件から約1年。この度、兵庫県警は、竹内氏に関する虚偽の情報をインターネット上で発信し、名誉を毀損した疑いで、「NHKから国民を守る党」党首である立花孝志容疑者(58歳)を逮捕しました。この逮捕は、今後の政治とインターネットにおける情報発信のあり方に一石を投じるものと見られています。
竹内元県議への「虚偽情報」が逮捕の焦点に
立花容疑者は、竹内元県議の生前の昨年12月に「警察の取り調べを受けているのはたぶん間違いない」と発言し、竹内氏が亡くなった直後の今年1月には「どうも明日逮捕される予定だったそうです」といった内容を公に発信していました。これらの発言は、竹内氏の社会的評価を著しく低下させる虚偽の情報であり、兵庫県警は名誉毀損の疑いが強いと判断し、今回の逮捕に至りました。長期間にわたり任意での事情聴取が続けられていましたが、捜査当局は慎重に証拠を固めてきたものと推測されます。
逮捕に踏み切った3つの理由:捜査の進展、選挙、そして「ドバイの記憶」
兵庫県警が立花容疑者の逮捕に踏み切った背景には、複数の重要な理由が存在すると、元テレビ朝日法務部部長の西脇亨輔弁護士は指摘しています。
容疑固まる:捜査資料の積み重ね
まず、最も基本的な理由は、これまでの捜査で名誉毀損罪の容疑が十分に固まったと判断されたことです。逮捕状の取得には、裁判所に対して事件の資料を示し、逮捕の必要性を明確に説明する必要があります。今回の逮捕は、その基準を満たすだけの証拠が警察によって集められたことを示しています。
選挙との関連:告示前の逮捕
次に、立花容疑者と選挙との関係も影響した可能性があります。選挙期間中の逮捕は「選挙妨害」と批判されるリスクがあるため、捜査機関は通常、より慎重な姿勢をとります。しかし、立花容疑者は昨年の兵庫県知事選後も多数の選挙に立候補しており、今月3日には学歴詐称問題で失職した伊東市長選への立候補を表明していました。伊東市長選の告示は12月7日の予定であり、その前に逮捕することで、今後の選挙活動への影響を最小限に抑えつつ、捜査を進める意図があったのかもしれません。
名誉毀損容疑で逮捕されたNHKから国民を守る党の立花孝志党首
「ドバイの記憶」:ガーシー氏の事例
そして、西脇弁護士が特に大きな理由と推測するのが「ドバイ渡航」の可能性です。立花容疑者は10月末にドバイに出国し、現地での交流の様子をSNSで公開していました。ドバイといえば、2022年の参院選でNHK党から当選したものの、その後もドバイに滞在し続け、最終的には参院から除名、さらに国際手配を経て日本への帰国時に逮捕されたガーシー(東谷義和)氏の拠点であった場所です。海外にいる容疑者の逮捕は外交上の問題も絡み、非常に手間がかかる経験から、今回の逮捕判断にはこの「ドバイの記憶」が強く影響したと考えられます。早期に身柄を確保することで、捜査の停滞を防ぐ狙いがあったと見られます。
今後の展開:捜査の出発点
今回の逮捕は、立花孝志容疑者に対する捜査が大きく前進したことを意味しますが、これはまだ一連の法的手続きの出発点に過ぎません。今後、警察はさらに捜査を進め、検察が起訴・不起訴の判断を下します。もし起訴された場合、裁判が始まり、争いが続けば最高裁判所まで三審制で審理が行われることになります。この事件が最終的にどのような結末を迎えるのか、司法の判断が注目されます。
立花氏の逮捕は、インターネット上での無責任な情報発信がもたらす影響の重大性を示唆しています。特に公人による発言が、個人の名誉や社会生活に与える甚大な影響について、改めて深く考える機会となるでしょう。





