外国人問題が表面化している埼玉県内で、参院選公示日の3日、埼玉選挙区から立候補した主要9政党の候補者たちによる出陣式や第一声が各地で行われた。その中で、外国人問題に対する言及の有無や姿勢が各候補者の間で分かれた。本稿では、現場取材に基づき、各候補者の外国人問題への対応を中心に、第一声の様子をレポートする。
公示日の第一声を取材した結果、日本維新の会、公明党、参政党の3党が外国人問題に言及した一方、自由民主党、立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、社会民主党の5党は外国人問題に直接触れなかった。日本共産党は、他の政党とは異なる独自の切り口でこの問題に触れたとされるが、具体的な内容は報道によって異なり、ここでは割愛する。外国人問題に触れなかった自民、立民、国民の3党は、いずれも取材に対し「優先順位が低い」「時間がなかった」などを理由に挙げた。また、これら3党の候補者はいずれも大野元裕知事からの応援やメッセージを受けていた点も共通している。
参院選公示日の埼玉県内。外国人問題への対応が注目される埼玉選挙区の各党候補者たち。
外国人問題に明確に言及した政党の候補者
日本維新の会:龍野真由美氏
浦和駅東口で行われた第一声で、維新新人の龍野真由美氏(52)は外国人問題への取り組みを強く訴えた。「外国人問題はいますぐにでも解決しなければならない。そう思っても、やってくれないのが、いまの政治だ」と現行政治を批判。特に外国人問題が深刻化している川口市の状況に言及し、「私は川口市の外国人問題にもしっかり取り組みたい」と述べ、具体的な課題解決に向けた意欲を示した。
公明党:矢倉克夫氏
3選を目指す公明現職の矢倉克夫氏(50)は大宮駅そごう前でマイクを握った。同氏は「ルールを守り合う環境を作るのが共生社会の前提」との認識を示し、その上で「私は法務省などとも連携し『不法滞在者ゼロプラン』を発表した」と具体的な政策に触れた。安心・安全な社会の実現を訴え、「安心の埼玉を、日本を、私がつくる」と力強く述べた。不法滞在者の問題解決を前面に出す姿勢がうかがえる。
参政党:大津力氏
参政新人の大津力氏(53)も浦和駅東口で演説を行った。同氏は外国人増加に伴う地域住民の困惑に焦点を当て、「日本の文化や風習がわからない人もおり、地域住民は本当に困っている」と現状を指摘。その解決策として「際限のない外国人労働者の受け入れに歯止めをかける」と受け入れ抑制の方針を打ち出した。さらに、保守を標榜する自民党がこの問題を推進していると批判し、「本当は保守を掲げている自民党がやらなければならないことを、むしろ自民党が推進している。全然、保守じゃないじゃないですか」と問いかけ、聴衆に訴えかけた。
外国人問題に直接触れなかった政党の候補者と、その背景
一方、自民、立民、国民の3党の候補者は第一声で外国人問題に直接言及しなかった。これらの候補者からは、演説後の取材でその理由について説明があった。
自由民主党:古川俊治氏
4選を目指す自民現職の古川俊治氏(62)は浦和駅東口で出陣式を開催。この場には大野知事が応援演説に駆けつけた。古川氏は主に「新産業の創出で経済を再興する」といった経済政策などを訴え、外国人問題には触れなかった。演説後の取材に応じた古川氏は「成長戦略など訴えたいことがたくさんあり、プライオリティー(優先順位)の問題」であると説明。ただし、「もちろん、外国人がルールを守るのは当たり前のことだ」と付け加えた。
立憲民主党:熊谷裕人氏
再選を目指す立民現職の熊谷裕人氏(63)も浦和駅東口で出陣式を行った。こちらも大野知事の応援演説があった後、熊谷氏は「子供たちに恥ずかしくない政治を」といったテーマを中心に訴えを展開し、外国人問題には触れなかった。演説後に取材に応じた際には「時間が短かったので、すべては触れられない。いちばん訴えたいことだけを訴えた」と、時間的制約を理由に挙げた。
国民民主党:江原久美子氏
国民新人の江原久美子氏(54)は地元深谷市で出陣式を行った。この出陣式では大野知事からの檄文が代読された。江原氏は「働き盛りの世代や若者の負担が重い。まずは手取りを増やす」など、主に3つの政策を訴求し、外国人問題には言及しなかった。演説後の取材に対し、江原氏は「時間がなかった。もし政策を5つ訴えられる時間があったら、外国人問題も触れていた」と述べ、時間があれば言及する意向があったことを示唆した。
まとめ:問われる候補者の優先順位
参院選埼玉選挙区の公示日第一声において、外国人問題への対応は候補者間で明確な差が見られた。維新、公明、参政の3党は、問題の深刻さを指摘し、それぞれ独自の解決策や考え方を提示した。一方、自民、立民、国民の主要3党は、他の政策課題を優先したためか、時間的制約を理由にこの問題に直接触れることを避けた。外国人問題が地域住民の間で関心を集める中、各候補者がこの問題をどのように位置づけ、どのような優先順位で取り組むのかが、今後の選挙戦で改めて問われることになるだろう。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/bf71abc073281cf0a46dd556e2e59d38576d3b6e