ロシアによるウクライナ侵略が開始されてから3年半が経過し、戦況の鍵を握る技術として無人機(ドローン)の重要性が一層高まっています。ロシア軍が多数の攻撃用ドローンを投入し続ける一方、ウクライナは迎撃用ドローンの開発と増産を急ピッチで進めており、両国の上空では連日、進化し続けるドローン同士の熾烈な戦いが繰り広げられています。この技術革新は、現代戦の様相を大きく変えるものとして世界中から注目されています。
ウクライナ、安価な迎撃ドローンでロシアの攻撃に対抗
ウクライナ企業「ピラニア・テク」が開発した革新的な迎撃用無人機は、地上の発射装置から高速で打ち上げられ、空高く舞い上がります。搭載された高性能カメラが、肉眼では捉えられない遠距離の標的ドローンを捕捉すると、人工知能(AI)が自動で接近。最終的な破壊判断は地上の操縦者によって行われ、時速300キロメートル以上、最高到達高度6000メートルというスペックで、「シャヘド型」と呼ばれるロシアの攻撃用ドローンなどを効果的に迎撃します。昨年夏から本格的な製造が始まり、現在は実戦での試験運用段階に入っています。
ウクライナのピラニア・テク社が開発した迎撃用ドローンが、地上発射装置から高速で飛び立ち、上空の標的無人機を捕捉する瞬間。費用対効果の高い防衛策として注目される。
この迎撃用ドローンの最大の特長は、その圧倒的なコストパフォーマンスにあります。1機あたりの価格が5000~7000ドル(約70万~100万円)と、米国製の地対空ミサイルシステム「パトリオット」の迎撃ミサイル1発分(推定約400万ドル)と比較して格段に安価です。ピラニア・テクの幹部アナトリ・ハラプチンスキーさん(46)は、「ロシアは毎晩何百機ものドローンを飛ばしており、我々は安価な解決策を見つける必要がある。地上発射型の迎撃用ドローンは、現時点で最も効果的で安価な手段だ」と述べ、多数の攻撃に対応するための費用対効果の高い防衛策として、その重要性を強調しています。
ロシア、シャヘド型無人機の大量生産と攻撃急増
一方、ロシアはイラン製の攻撃用無人機「シャヘド」の技術を基盤とした国産無人機「ゲラン」の量産体制を急速に確立しつつあるとされています。ウクライナ国防省情報総局は今年6月、ロシアが「シャヘド型無人機」を1日に約170機生産する能力を有していると指摘しており、これは月に約5000機という驚異的なペースに相当します。
この生産能力の増強は、ウクライナに対する攻撃へのドローン投入数の急増として顕著に表れています。ウクライナ空軍の発表によると、今年7月にロシア軍がウクライナ領内に飛ばした攻撃用無人機は6000機を超え、1か月あたりの過去最多記録を更新しました。特に7月8日から9日にかけての一連の攻撃では、約730機もの無人機が投入されるなど、ロシアのドローンによる圧力は増す一方です。
結論
ウクライナ戦争における無人機は、偵察から攻撃、そして迎撃に至るまで、戦場のあらゆる局面でその存在感を強めています。ロシアが大量投入戦略で戦術的優位を狙う中、ウクライナはコスト効率の高い迎撃ドローンという革新的な技術で対抗し、非対称戦の新たな形を模索しています。このドローンを巡る技術革新と攻防は、今後の国際紛争における軍事戦略、防衛産業、そして国際安全保障のあり方に計り知れない影響を与えるものとして、その動向が引き続き注目されます。
参考文献
- 読売新聞オンライン: ドローンがドローンに体当たり…ウクライナ上空 (記事参照)
- Yahoo!ニュース: 地上の発射装置から飛び立つウクライナ企業「ピラニア・テク」が開発した迎撃用ドローン(同社提供の動画より) (記事参照)
- ウクライナ国防省情報総局 (発表情報)
- ウクライナ空軍 (発表情報)