国際協力機構(JICA)が発表した「JICAアフリカ・ホームタウン」事業を巡り、関係国の一つであるタンザニアの現地メディアが「日本が山形・長井市をタンザニアに捧げた」と解釈され得る報道をしたことで、SNS上で大きな議論を巻き起こしている。日本の地方自治体とアフリカ諸国の連携強化を目指す本事業は、現地メディアの不適切な表現により、国内外で意図せぬ波紋を広げた。
JICA「アフリカ・ホームタウン」事業の概要
この事業は、アフリカ開発会議(TICAD9)の一環として、8月21日に横浜で開催された会議で発表されたものだ。地域活性化、人材交流、そしてアフリカの発展に繋げることを目的とし、ホームタウンに認定された日本の地方自治体とアフリカ各国との関係性を深める狙いがある。具体的には、愛媛県今治市がモザンビーク共和国、千葉県木更津市がナイジェリア連邦共和国、新潟県三条市がガーナ共和国、そして山形県長井市がタンザニア連合共和国の「ホームタウン」となった。
タンザニア・タイムズ報道の波紋:「捧げられた長井市」の誤解
事業の発表を受け、タンザニアの主要メディアの一つである「タンザニア・タイムズ」は、「Japan Dedicates Nagai City To Tanzania」という見出しで報道した。「Dedicates」という単語は「捧げる」「献呈する」「専念する」など幅広い意味を持つため、「日本が長井市をタンザニアに捧げた」と直訳できる見出しとなった。記事内にはさらに「日本の一部が実質的にタンザニアとみなされた(There is a part of Japan which will essentially be regarded as ‘Tanzania.’)」との記述もあり、この表現が誤解を助長した。
タンザニア・タイムズによる「Japan Dedicates Nagai City To Tanzania」の見出し画像
SNSでの広範な議論:政治家・著名人の声
タンザニア・タイムズの記事に対し、日本のSNS上では報道の真意や現地での捉え方への疑問の声が多数上がった。奈良市議選で無所属から初当選したへずまりゅう氏は、「日本政府に問いたい。『日本は、山形県長井市をタンザニアに与える』『外務省は、長井市ほか3つの市をアフリカ人に与えることを提案』日本国民に黙って一体何をしたんだ?国民の怒りを知れ」と強い言葉で政府を批判する投稿を行った。
また、参政党の愛知・稲沢市議である小柳彩子氏は、「日本がタンザニアに長井市を寄贈したと話題になっていますが記事を読むと姉妹都市の様なものです」と説明しつつも、「見出しにどうしてdedicateという単語を使ったんでしょう」と疑問を呈した。さらに「今の政権なら本当にしそうなので紛らわしいからやめてほしいです」と懸念を示し、「アフリカ人移民受け入れなんてことになると困りますので対象の市はしっかりと監視してください!」と訴えた。他にも、「タイトルが恐ろしい」といった見出しや決定内容への批判が相次ぎ、「タンザニア」がX(旧Twitter)のトレンドワードに入る事態となった。
結論
JICAの「アフリカ・ホームタウン」事業は、国際協力と地域活性化を目指す重要な取り組みである。しかし、タンザニア・タイムズによる「Dedicates」という単語を用いた報道が、日本のSNS上で大きな誤解と論争を引き起こした。この一連の出来事は、国際的な情報伝達における言葉の選び方や、文化・社会的背景の違いによる解釈の難しさ、そしてそれが国内の世論に与える影響の大きさを浮き彫りにしたと言えるだろう。
参考文献
- Yahoo!ニュース (nikkansports.com): https://news.yahoo.co.jp/articles/b1f257f695ecedb136bf314197bc13cf23a9545





