大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」が、開幕を控え、今や国民的な人気者となっている。そのユニークなデザインは当初「気持ち悪い」「理解不能」と評されながらも、時を経て熱狂的な支持を集めるに至った。本記事では、キャラクターデザイン選考委員会で座長を務めたグラフィックデザイナーの原研哉氏の視点から、ミャクミャクの誕生秘話、その「ヤバさ」の真髄、そして未来に秘められた新たなポテンシャルを探る。
止まらないミャクミャク人気:社会現象を巻き起こす魅力の源泉
万博会場限定の「ミャクミャクぬいぐるみくじ」は連日3時間待ちの行列を作り、6月にはレアな「黒ミャクミャク」の盗難事件まで発生するなど、その人気ぶりは社会現象となっている。このブームの最前線にいるのが、日本を代表するグラフィックデザイナーであり、ミャクミャク選考委員会の座長を務めた原研哉氏だ。彼は自身が展示ディレクションを担当する万博パビリオン「BLUE OCEAN DOME」への視察を兼ねて、デザイン選考から現在の人気爆発まで、ミャクミャクの全貌を見守り続けてきた。
2025年大阪・関西万博の公式キャラクター、ミャクミャクのぬいぐるみが当たるくじに、来場者が長時間並び熱狂している様子。
物議を醸したデザイン選考:原研哉氏が語る「C案」選定の真意
2021年の一般公募を経て、翌2022年に1898作品の中からミャクミャクが公式キャラクターとして選出された際、そのデザインは世間から大きな反響を呼んだ。SNSでは「気持ち悪い」「理解不能なデザイン」「選ばれたCが一番ヤバいやん!」といった否定的な声が相次ぎ、「炎上」状態に。なぜ、これほどまでに賛否両論を呼んだデザインが選ばれたのか。
原氏は、その選択について「シンボルマークをかぶっている、という点では、シンボルマークの延長にあるキャラクター」であると説明する。そして「『ヤバい』という言葉が、よくも悪くも、感受性の針を大きく揺さぶる現象に対して発せられるなら、今回のシンボルマークもキャラクターも『ヤバい』の絶対値が大きかったと思います」と、その特異な魅力を強調した。この「ヤバい」という表現は、単なる奇抜さだけでなく、人々の感性に深く訴えかけるデザインの力を示唆している。選考委員の一人であるタレントの中川翔子氏も、最優秀作品発表会見で「これまでの万博からすれば、このぶっ飛んだデザインが選ばれるのはかなり斬新だと思う」と述べ、その革新性を高く評価している。
「ヤバい」から「愛される」へ:ミャクミャクが示す文化の変遷
当初の戸惑いや批判的な意見は、時が経つにつれて愛情と熱狂へと変化していった。ミャクミャクが持つ「ヤバい」という感受性の針は、ネガティブな側面からポジティブな魅力へと大きく振れ、今や多くの人々に受け入れられる国民的キャラクターとしての地位を確立している。この現象は、デザインの持つ潜在的な力と、社会が新しいものを受け入れる柔軟性を示唆しているだけでなく、その「残念」ポイントすらも新たなポテンシャルとして昇華させる文化的な変遷を示している。
大阪・関西万博の開幕を目前に控え、ミャクミャクは単なる公式キャラクターの枠を超え、文化的なアイコンへと成長を遂げた。原研哉氏の言葉が示すように、その「ヤバい」デザインは、見る者の心を強く揺さぶり、結果として唯一無二の存在感を放っている。当初の物議を乗り越え、愛される存在となったミャクミャクの物語は、デザインと社会の対話の重要性、そして予期せぬ形で生まれる人気キャラクターの持つ無限のポテンシャルを我々に教えてくれる。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/48510b5886fa875550800abb385b86aaf8422376
- AERA dot. (朝日新聞出版): https://dot.asahi.com/