人生の転機を越えて:漫画家くらたま姉妹が探る青森の魅力と新たな絆

漫画家くらたま氏が、長年連れ添った夫、叶井俊太郎氏を亡くして以来、新たな人生設計と向き合う日々を送っています。喪失という大きな転機を経て、彼女の支えとなっているのが2歳年下の妹の存在です。近年、以前にも増して絆を深めている五十路の姉妹が、心の再生を求め、未知の地・青森県への旅に出ました。この旅は、単なる観光に留まらず、人生を見つめ直し、新たな一歩を踏み出すための重要な機会となることでしょう。

「独り」と向き合う日々:漫画家くらたまの新たな挑戦

夫の死から14年半。漫画家くらたま氏の前に立ちはだかったのは、残された人生をいかに「独り」で生きるかという問いでした。これまでとは異なる日々の中で、彼女の心に大きな存在感を示しているのが妹です。幼少期には特段親密だったわけではないものの、今や両親以上に身近で頼れる存在となっています。夫が他界した際も、妹は事務的な手続きの面でくらたま氏を献身的に支え、その心の支えとなりました。福岡の実家近くに住む妹は、頻繁に上京しては姉と時間を共にしています。

そんな中、妹が「まだ行ったことのない県に行きたい」と提案。くらたま氏自身も、人生で一度だけ仕事で八戸を訪れたきりという青森県への姉妹旅行が実現しました。九州に住む福岡県民にとって、東北地方は北海道よりも遠い場所というイメージがあります。未踏の地への期待に胸を膨らませながら、2人は10月のとある朝、東北新幹線に乗り込み、終点「新青森駅」を目指しました。

東北新幹線が誘う未知の青森へ

「やっぱり、ちょっと東京より涼しいね」。新青森駅のホームに降り立つと、肌を刺すようなひんやりとした空気が2人を包み込みました。事前に予約していたレンタカーを借り、ちょうど昼時だったため、まずは腹ごしらえをすることに。美味しい昼食を心ゆくまで楽しむため、朝食は抜いてきたという徹底ぶりです。

「やっぱり青森といえば、まずはマグロでしょ」「うん、マグロだね」。青森の食への期待を胸に、2人は地元の市場へと向かいました。旅先では、普段よりも財布の紐が緩むもの。2人はそれぞれ「カマトロ&カマ中落ち丼(3500円)」と「本マグロ中落ち丼(2400円)」を注文。さらに、味噌汁の一つは、様々な野菜や山菜を刻んで入れた青森の郷土料理「けの汁(500円)」に変更し、地元の味覚を存分に味わう準備を整えました。

青森の味覚を堪能:鮮度抜群のマグロ丼と郷土料理

注文した料理が運ばれてくると、2人の顔には期待が広がります。「わ、おいしい!」。特に「本マグロ中落ち丼」の鮮度と旨味には、くらたま氏も妹も舌を巻きました。価格はこちらの方が1000円以上安いにも関わらず、本マグロの持つ濃厚な味わいは格別だったと言います。一つだけ心残りがあるとすれば、海鮮丼は甘い酢飯よりも普通の白飯で食べたい派の姉妹にとって、「注文時に伝えればよかった」という小さな後悔が残ったものの、青森の海の幸の素晴らしさを十分に堪能しました。

満腹になった後、2人は市場内を散策し、ホタテをはじめとする魚介の干物など、青森ならではのお土産を購入しました。その後、レンタカーで一路、八甲田山へと向かいます。山頂へと続くロープウェイに乗るためです。

八甲田山の秋色:一足早い紅葉の絶景

10月中旬といえば、福岡や東京ではまだ紅葉シーズンには早く、紅葉を意識することはあまりありません。しかし、本州最北端に位置する青森、そして八甲田山では、一足早い秋の訪れを感じさせる見事な紅葉が見られました。赤や黄色に染まった広大な山々の景色は、姉妹の心を癒し、旅に彩りを添えました。ロープウェイから眺めるパノラマは、まさに息をのむ絶景であり、自然の壮大さに感動を覚えたことでしょう。

旅はまだ序盤。この後、2人を待っていたのは、旅のハイライトとも言える「酸ヶ湯温泉」での体験でした。日本を代表する混浴文化が息づくその秘湯で、一体どのような「衝撃の光景」が姉妹を待ち受けていたのでしょうか。

青森の秘湯、酸ヶ湯温泉を思わせる歴史ある混浴温泉の賑わい青森の秘湯、酸ヶ湯温泉を思わせる歴史ある混浴温泉の賑わい

旅の終着点、そして次の物語へ:酸ヶ湯温泉の予感

青森への旅は、漫画家くらたま氏とその妹にとって、単なる娯楽以上の意味を持ちました。夫の死という人生の大きな節目に直面し、新たな生き方を模索する中で、妹との絆を再確認し、共に美しい景色と美味しい料理を分かち合う時間は、心の深い部分を癒やし、前向きな気持ちを育んだことでしょう。

八甲田山の壮大な紅葉に感動し、青森の豊かな自然と食文化に触れた姉妹の旅は、人生の再構築に向けた大切な一歩となりました。この後訪れる酸ヶ湯温泉での経験は、姉妹の心に忘れがたい記憶を刻み、今後の人生における新たな物語の序章となるに違いありません。青森の地で培われた姉妹の絆と、そこで得た心の豊かさは、くらたま氏が「独り」で生きるこれからの日々に、確かな光を与え続けることでしょう。

参考文献