日産、創業地・追浜と湘南工場での車両生産終了を正式発表 – 経営再建「Re:Nissan」の苦渋の決断

日産自動車が国内2工場の閉鎖を公表して以来、その最有力候補として、創業の地である神奈川県の追浜工場と、日産車体湘南工場の名が噂されてきました。日産はこの報道に対し否定を続けていましたが、ついに両工場での車両生産を終了することを正式に発表。これは、日産の経営再建計画「Re:Nissan」における極めて大きな決断であり、自動車業界のみならず、地域経済にも大きな影響を及ぼすものとして注目されています。

「Re:Nissan」計画の核心:巨額損失と大胆な構造改革

日産は2024年度通期の決算で、6709億円という巨額の純損失を計上しました。この厳しい状況を受け、2024年5月15日には、大胆な経営再建計画「Re:Nissan」を発表。この計画では、2024年比で固定費と変動費を合わせて5000億円削減することを目指し、2万人の人員削減、そして既存の17工場から10工場へと車両生産拠点を削減(国内からは2工場)する方針が示されました。今回の追浜工場と湘南工場の生産終了決定は、この構造改革の中核をなすものであり、日産の未来を左右する重要な一歩となります。

正式決定した工場閉鎖の時期と車種移管の詳細

「Re:Nissan」発表から約2カ月後の7月15日、日産は追浜工場と日産車体湘南工場における車両生産終了を正式にアナウンスしました。追浜工場は2027年度末(2028年3月)、湘南工場は2026年度をもって生産を終了します。現在、追浜工場ではノート/ノートオーラを生産していますが、これらは2027年度末まで生産を続けた後、九州工場に移管される予定です。また、記者会見でエスピノーサ社長は新型キックスの追浜での生産を公表しましたが、これもノート/ノートオーラに先駆けて九州工場へ移管される見通しです。一方、湘南工場で生産されるADは2025年10月、NV200バネットは2026年度末で委託生産を終了します。これにより、日産の国内生産能力は合計約39万台の減となる見込みです。エスピノーサ社長は、「生産能力やコスト競争力などから追浜工場を九州に移管、統合することが最も効果的だという結論に至った」と説明しています。

日産の主要生産拠点である追浜工場(手前)と、そこで生産される人気車種ノート/ノートオーラのラインナップ。同工場は「Re:Nissan」計画に基づき2027年度末に車両生産を終了する予定。日産の主要生産拠点である追浜工場(手前)と、そこで生産される人気車種ノート/ノートオーラのラインナップ。同工場は「Re:Nissan」計画に基づき2027年度末に車両生産を終了する予定。

地域経済と従業員への影響、そして自治体の対応

追浜工場には、車両生産機能以外にも総合研究所、グランドライブ(テストコース)、衝突試験場、専用ふ頭が併設されており、これらは今後も事業を継続します。しかし、約2400名の大半が工場勤務者であるため、今回の閉鎖決定が地元経済に与える影響は大きく、従業員の不安は解消されていません。また、日産単独の問題にとどまらず、数多くの関連企業やサプライチェーンへの影響も甚大です。日産は、追浜工場については2027年末までの勤務継続を約束し、その後の雇用・勤務については決定次第伝えるとしています。生産終了発表の3日後には、ステークホルダーへの説明や労働組合との折衝を開始するなど、対応に追われています。今回の発表に対し、横須賀市の上地克明市長、横浜市の山中竹春市長はともに、関連企業や雇用関係への影響を深く憂慮するコメントを発表。特に横浜市では、市内中小企業向けの「特別相談窓口」を設置すると同時に、竹内真二経済産業大臣政務官へ支援を要請するなど、迅速な対応を見せており、この問題の重大性を物語っています。

広大な工場跡地の将来と過去の事例からの示唆

追浜工場の将来的な活用方法について、日産は「幅広い選択肢を検討し、最適な活用方法を決定する」と述べるに留まっており、噂されている台湾の鴻海精密工業との協業や具体的な売却先への言及はありませんでした。日産は過去にも、1995年の座間工場、2001年の村山工場といった国内の主要工場を閉鎖した経験があります。これらの工場跡地は、地元自治体との協議を重ねた結果、大型商業施設や新車・中古車の販売施設などに生まれ変わり、地域再生の成功例となりました。追浜工場は54万7606平方メートルという広大な敷地を有しており、その跡地が今後どのように活用されていくのか、大きな注目が集まっています。

日産の追浜工場と湘南工場の車両生産終了は、「Re:Nissan」計画を推進し、企業として持続可能な成長を目指すための、痛みを伴うが不可避な決断と言えるでしょう。短期的には地域経済や雇用に大きな課題をもたらしますが、長期的な視点で見れば、日産が国際競争力を回復し、次世代のモビリティ社会に対応するための重要な構造改革です。今後、具体的な雇用対策、関連企業への支援、そして広大な工場跡地の再開発計画がどのように進展していくのか、引き続きその動向を注視していく必要があります。

出典元