「昨年の誕生日、LINEを送ったら〈上が最悪だから辞めたい〉と返信が来たんです。それまで仕事の愚痴なんて聞いたことがなかったのに、あの副知事の下で働くようになってから、弱音を吐くようになった」――。茨城県の飯塚博之副知事(62)の秘書を務め、昨年10月20日に自ら命を絶った桜木拓也さん(仮名、享年41)の遺族は、後悔を滲ませながら語りました。桜木さんは亡くなる5日前、飯塚副知事からのパワハラに悩んでいたことを明かす遺書を残しており、この悲劇は茨城県政における深刻な問題を浮き彫りにしています。内部調査ではパワハラは認定されなかったものの、遺族の訴えと調査結果の乖離は、県政の透明性と説明責任に対する疑念を深めています。
極秘設置された第三者委員会の「パワハラなし」結論
桜木さんの自死後、遺族の要望を受けて茨城県は昨年11月、極秘で第三者委員会を設置しました。しかし、今年2月に発表された最終結論は、飯塚副知事と秘書課長を最も軽い処分の厳重注意とし、「パワハラはなかった」というものでした。この結論は、桜木さんの遺族が抱く飯塚副知事に対するパワハラ疑惑とは大きく食い違うものであり、調査の透明性や公平性について疑問の声が上がっています。県政担当記者は、「この軽すぎる処分は、県が真摯に問題に向き合っていない証拠ではないか」と指摘しています。
大井川知事の「独裁」県政と側近・飯塚副知事
飯塚博之副知事は、3期目当選が確実視される大井川和彦知事(61)の側近中の側近として知られています。「週刊文春」はこれまで、大井川知事について、職員や県関係者へのパワハラ、公用車の私的利用、県の最高意思決定機関での議事録を残さないなど、「独裁」ともいえる県政運営の実態を報じてきました。飯塚副知事は定年退職後、新設された県庁改革推進官を経て、2023年末に副知事に就任した経緯があります。桜木さんは2022年4月から秘書課に配属され、小野寺俊前副知事時代から副知事の秘書を務めていました。このような背景から、今回のパワハラ疑惑は大井川県政全体の問題として捉えられています。
茨城県知事の大井川和彦氏。副知事のパワハラ疑惑の背景にある「独裁」的な県政運営が指摘されている。
誠実な人柄だった故桜木さんの苦悩
桜木拓也さんは、3人兄弟の長男として弟たちからも深く信頼され、家族旅行の段取りをするなど、責任感の強い人柄でした。趣味のドラクエウォークやポケモンGOでは地域限定アイテムを集めることに熱中する凝り性な一面も。遺族のAさんは、「周囲の人を傷つけることは言わないような、気が遣える優しくて真面目な性格でした」と振り返ります。地元の公立高校から筑波大学に進学し、県庁での秘書の仕事にも真摯に取り組んでおり、小野寺前副知事のことは「ボス」と呼び、「あの人のために頑張ろう」と意欲的に業務に打ち込んでいました。そのため、遺族は桜木さんが残した遺書に記された、それまでの彼からは想像できない副知事への苦悩の言葉に大きな衝撃を受けました。
茨城県庁で起きたとされる副知事によるパワハラと職員の自死は、個人の尊厳に関わる重大な問題であると同時に、県政のガバナンスと公務員倫理のあり方を問うものです。今回の第三者委員会の結論は遺族の疑問を解消するには至っておらず、県民の信頼を取り戻すためには、より一層の透明性と説明責任が求められます。今後、この問題がどのように進展していくのか、日本ニュース24時間では引き続き注視してまいります。
参考文献