「令和版キューブキュービック」待望論:日産はなぜコンパクトミニバン市場に再参入すべきか?

かつて日産が販売していた3列シートのコンパクトミニバン「キューブキュービック(キューブ3)」が2008年に終売して以来、この市場における日産の存在感は希薄なものとなっています。一方、競合他社であるトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」は、その利便性と実用性で圧倒的な人気を誇り、国内市場で確固たる地位を築いています。日産はなぜこのカテゴリーから撤退したのでしょうか。そして、もし「令和版キューブキュービック」として復活するならば、どのような進化を遂げるべきなのでしょうか。この市場の現状と過去の教訓を分析し、日産が再びこの分野で輝くための可能性を探ります。

国内コンパクトミニバン市場の現状と日産の不在

現在、国内のコンパクトミニバン市場で3列シートモデルとして販売されているのは、トヨタ「シエンタ」とホンダ「フリード」の2強に絞られています。2024年の国内新車登録台数ランキング(軽自動車を除く)を見ると、シエンタは11万1090台で総合3位、フリードは8万4082台で総合5位を記録しており、両モデルがトップ5にランクインしていることからも、3列シートコンパクトミニバンへの国内需要がいかに高いかが明確です。

このような状況下で、日産はこの需要の高いセグメントに現行モデルを持っておらず、大きな販売機会を逸していると言わざるを得ません。ファミリー層を中心に高い人気を維持するこの市場への再投入は、日産の業績改善にも大きく貢献する可能性があります。しかし、単に過去の「キューブキュービック」を再生産するだけでは、現在の強力なライバルたちに対抗することは困難でしょう。

旧型「キューブキュービック」が市場から消えた理由

2003年9月にデビューした初代キューブキュービックは、2代目「キューブ」のホイールベースを170mm延長し、折りたたみ式の3列目シートを追加した派生モデルとして登場しました。当時人気を博していたホンダ「モビリオ」や初代「シエンタ」への対抗馬として期待されましたが、販売は当初の予測ほど振るいませんでした。その主な理由をいくつか考察します。

居住空間とパッケージングの課題

最も大きな要因の一つは、そのコンパクトすぎる全長にありました。キューブキュービックの全長はおよそ3.9mと、当時のライバル車(約4.2m~4.3m)と比較して短く、特に3列目シートの空間は非常にミニマムで、実用性に乏しいと評価されました。緊急時以外での利用には厳しい居住性が、ファミリー層のニーズに応えきれなかったと考えられます。

利便性を左右したドア形式と知名度

日産の3列シートコンパクトミニバン「キューブキュービック」。競合ひしめく市場で再登場が待たれる。日産の3列シートコンパクトミニバン「キューブキュービック」。競合ひしめく市場で再登場が待たれる。

さらに、後席ドアがスライド式ではなくヒンジドア式であったことも、販売不振の決定的な要因とされています。狭い場所での乗り降りのしやすさや、小さな子供の安全性から、スライドドアはコンパクトミニバンにおける必須機能と認識されています。また、ベースとなった2代目キューブの人気に隠れ、3列シートモデルとしての知名度が十分に高まらなかったことも、販売に影響を与えた可能性があります。これらの複数の要因が重なり、期待通りの成果を残すことなく、2008年に生産を終了しました。

「令和版」キューブキュービックに求められる要件

現在のシエンタやフリードが圧倒的な支持を得ている背景には、現代のユーザーが求める要件を確実に満たしている点があります。日産がいま3列シートのコンパクトミニバンを開発し、市場に再投入するのであれば、以下の基本的な要件を満たすことが不可欠です。

ユーザーが求める基本的なパッケージング

まず、両側スライドドアの採用は絶対条件となります。これにより、狭い駐車場での開閉や、小さなお子様の乗り降りが格段に楽になります。また、車内で立ったまま着替えができるほどの十分な室内高も、ファミリー層にとっては非常に重要な要素です。そして、3列目シートも「非常時であれば十分対応できる」と感じられるだけのスペース確保が求められます。

サイズと機能性の標準化

こうした条件を満たすため、現在の競合モデルは全長およそ4.3m、全高約1.7mの5ナンバーサイズを基本としています。日産が「令和版キューブキュービック」を開発するならば、これらの市場の「標準」となるサイズ感を踏襲し、基本的な機能性をしっかりと押さえるべきです。たとえ「シエンタやフリードの模倣」と評されたとしても、これはユーザーが長年培ってきたニーズであり、これを無視しては成功は望めません。まずは基本に忠実に、ユーザーの期待に応えることが最優先となります。

結論

日産が過去の「キューブキュービック」の教訓を活かし、現代の市場ニーズに合致した3列シートコンパクトミニバンを再投入することは、同社の業績回復だけでなく、国内自動車市場における選択肢を増やす上でも非常に意義深いことです。両側スライドドア、適切な全長と室内高、そして実用的な3列目シートといった要素を兼ね備えた「令和版キューブキュービック」の登場は、多くの日本のファミリー層が待ち望んでいることでしょう。日産がこの大きなチャンスを捉え、再びこの競争の激しい市場で存在感を発揮することを期待します。

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