8月26日の「火山防災の日」を迎え、日本政府は富士山が大規模噴火を起こした場合に想定される甚大な被害を具体的に示すCG(コンピュータグラフィック)映像を公開しました。この映像は、内閣府が公式ホームページやYouTubeを通じて配布したもので、富士山噴火による火山灰が首都圏にもたらす影響を詳細に再現し、国民に対し事前の備えの必要性を強く訴えかけています。昨年から8月26日を「火山防災の日」と定め、活火山対策への国民の関心と理解を深める努力が続けられています。
想定される「宝永噴火」級の被害シナリオ
今回公開された約10分の映像では、1707年に発生した宝永噴火と同規模の事態を仮定し、その被害規模が推定されています。例えば、富士山からおよそ60キロメートル離れた神奈川県相模原市では、噴火からわずか2日で20センチメートルの火山灰が積もると予測。さらに、約100キロメートル離れた東京新宿区でも、同じく2日後には5センチメートル以上の火山灰が堆積すると想定されています。噴火開始から3時間余りで火山灰が首都圏に到達し、鉄道の運行が停止するだけでなく、送電設備が故障して広範囲で停電が発生する可能性も示されています。
富士山大規模噴火で首都圏に降り注ぐ火山灰のCGシミュレーション映像(日本内閣府YouTube動画キャプチャー)
都市機能を麻痺させる火山灰の脅威
映像は、火山灰に覆われ、まるで深い夜のような暗闇に沈んだ都市の様子を生々しく再現しています。特に衝撃的なのは、30センチメートル以上の火山灰が積もった結果、木造家屋が倒壊する場面です。このような被害は、単に建物を損傷させるだけでなく、道路交通の寸断、通信インフラの破壊、ライフラインの停止など、都市のあらゆる機能を麻痺させる恐れがあることを浮き彫りにしています。火山灰は電子機器にも悪影響を及ぼし、現代社会における情報通信基盤にも深刻な打撃を与えることが懸念されます。
地球科学者からの警告:次の噴火は「いつ起きても不思議ではない」
映像には、地球科学の第一人者である藤井敏嗣・東京大学名誉教授が登場し、警鐘を鳴らしています。藤井教授は「富士山は過去、平均して30年に1回は噴火していたが、最近300年以上は静かだった」と指摘。「次の噴火はいつ起きても不思議ではない」と語り、現在の富士山の活動状況が「少し異常な状態」であると警告しています。活火山である富士山は「必ず噴火する」という教授の言葉は、その潜在的な危険性を改めて国民に認識させるものです。
政府からの「備え」への切実な呼びかけ
内閣府の関係者は「富士山に大規模噴火が発生した場合、首都圏を含む広範囲に影響を及ぼす可能性がある」と強調しています。今回のCG映像を公開した目的について、「富士山に噴火が発生した場合、私たちの生活にどのような被害が及ぶのかを想像し、備えてほしい」と、国民一人ひとりに具体的な行動を促しています。この呼びかけは、政府が国民に対し、単なる情報提供に留まらず、災害への意識を高め、自発的な防災対策を講じることの重要性を訴える切実なメッセージとなっています。
結論:富士山噴火は他人事ではない、日頃からの備えと意識向上
富士山の大規模噴火は、決して遠い未来の出来事ではなく、現代の日本社会、特に首都圏の生活に計り知れない影響を及ぼす現実的な脅威です。内閣府が公開したCG映像は、その想像を絶する被害の規模を視覚的に訴えかけ、私たちに「もしもの時」への備えを強く求めています。日頃からのハザードマップの確認、防災用品の準備、家族との避難経路の共有など、個々が意識を高め、具体的な対策を講じることが、未来の被害を最小限に抑えるための第一歩となります。