近年、日本の都市部では電動キックボードの利用者が目覚ましく増加しています。この背景には、各地で展開されるシェアサービスの普及に加え、2023年7月の道路交通法改正による「特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)」区分の新設があります。これにより、特定の条件を満たせば運転免許が不要となり、手軽に利用できるようになったことが普及を後押ししていると考えられます。しかしその一方で、飲酒運転、信号無視、逆走といった危険な運転行為が頻発し、社会的な問題として広く認識されるようになっています。
普及の裏側で顕在化する危険運転の実態
特定小型原付としての電動キックボードは、一定の要件を満たすことで運転免許が不要となる一方で、危険運転が後を絶ちません。実際に、2025年8月には東京都新宿区で、信号無視をした電動キックボードが自動車と衝突するという交通事故が発生しました。この事故の映像やニュースがSNS上で拡散されると、「信号無視は危険すぎる、これで自動車側の過失割合が高くなるのは納得できない」といった、危険な運転を行う電動キックボード利用者への厳しい意見が多数寄せられました。
二段階右折が必要な特定小型原付と原付一種。3車線以上の交差点での正しい右折方法を示す図。
SNS上では、他にも電動キックボードの交通ルールに関するさまざまな声が見られます。「そもそも二段階右折が何なのか理解していない人が公道で電動キックボードに乗れるのはおかしい」「『二段階右折』を知らない人は、自転車や電動キックボードに乗るべきではない」といった、免許が不要である現状への疑問が少なくありません。
「二段階右折」を巡る混乱と免許制度への疑問
電動キックボード利用者の中には、交通ルール、特に「二段階右折」について十分な知識がないまま運転している人が少なくないようです。SNSでは、「電動キックボードは原付と同じで、二段階右折をしないと違反だ!」「車道のど真ん中を走っている電動キックボードを見かけるが、二段階右折が必須であることを忘れないでほしい」といった、ルール順守を求める警告の声も上がっています。一方で、「二段階右折がよく分からずスクーターを避けてきたが、電動キックボードに乗るようになってようやく理解できた」という声もあり、ルールの認知度にばらつきがある現状がうかがえます。
電動キックボード利用者向けに、道路交通法で定められた二段階右折の適切な手順を説明するイラスト。
では、具体的に電動キックボードはどのような交通ルールを守る必要があるのでしょうか。シェアサービスで提供されている電動キックボードの多くは「特定小型原付」に分類されます。特定小型原付には、最高速度20km/h、原則として車道や自転車専用通行帯を走行することなど、明確な交通ルールが定められています。逆走、交差点での信号無視、酒気帯び運転などは当然ながら違反行為です。さらに、大手電動キックボードシェアサービスであるLUUPも、公式SNSで「LUUPの電動キックボードの右折方法は二段階右折です。車線の数にかかわらず、車道の一番左側に沿って右に曲がるようにしてください」と明確に発信し、利用者への注意喚起を行っています。
利用者に求められる安全意識と正確な交通ルール理解
電動キックボードは、決して「好きな場所を自由に走行できる」乗り物ではありません。利便性の高さから急速に普及が進む一方で、交通ルールの軽視や無理解による危険運転が社会問題となっています。利用者一人ひとりがこれらのルールを正しく理解し、周囲の安全を確保しながら走行することが、安全な社会の実現のために強く求められています。電動キックボードの適切な利用は、利用者の安全だけでなく、他の交通参加者の安全にも直結するため、より一層の交通安全意識の向上が不可欠です。
Peacock Blue K.K.