【ロンドン=板東和正】欧州連合(EU)離脱の命運を決める英総選挙で、早期離脱を公約に掲げた与党、保守党が有権者の支持を集めた。離脱方針を決めた2016年の国民投票から約3年半がたった今も、離脱派の根強さが浮き彫りになった形だ。ただ実際の離脱には、EUとの貿易交渉といった課題が残っており、今後もEUとの関係をめぐり混乱は続きそうだ。
今回の総選挙は、EU離脱の判断を有権者に委ねる「事実上の国民投票」とみられていた。英BBC放送が出口調査に基づいて保守党が圧勝すると報じたことを受けて、同党関係者は「有権者が16年に続いて再び、離脱の道を選んだ歴史的瞬間だ」と強調した。
一方、離脱の是非を問う国民投票を再び実施すると公約で掲げた最大野党の労働党は、票数を伸ばせない情勢だ。「残留」、「離脱」を明確にしなかった同党のあいまいな対応に、有権者が離れていったとみられる。
総選挙を受けて保守党は、来年1月末までの離脱を目指し、EUと合意した離脱協定案の関連法案審議を12月中に下院で再開する。関連法案の成立後、協定案の採決が行われる見通しだ。保守党は協定案の可決に必要な過半数の議席を確保する見通しで、来年1月末までの離脱に向けた議会手続きは円滑に進む公算が大きい。
離脱実現に向けた今後の課題は貿易交渉だ。ジョンソン首相の協定案では、現状の経済関係を2020年末まで継続する「移行期間」が終わった時点で、英国全体がEU関税同盟から離脱する方針。保守党は同期間までにEUとの自由貿易協定(FTA)の締結を目指すが、作業には数年かかるともいわれ、予定通りに交渉が進むかは不透明だ。FTAがなければ、物流の混乱といった「合意なき離脱」に並ぶ悪影響が指摘されている。