数年以内に、日本の小売業界の勢力図は劇的に変化するかもしれません。コンビニエンスストアも従来の食品スーパーも、「フード&ドラッグ」業態の猛攻の前には、対抗が困難になる日が来る可能性が指摘されています。すでに地方や郊外では、コスモス薬品やクスリのアオキといった「フード&ドラッグ」店舗が食品スーパーを凌駕し、消費者の強力な支持を集めています。なぜこの業態はこれほどまでに強く、競合を圧倒して拡大を続けられるのか。あらゆる角度からそのビジネスモデルを分析すると、将来的に業界内で比類なき存在となる可能性が見えてきます。
「フード&ドラッグ」業態の躍進と最新市場動向
ドラッグストアおよびフード&ドラッグ業態の上場大手各社は、2024年度決算で軒並み増収増益を達成し、その好調ぶりを際立たせています。特にドラッグストア業界で売上高第4位を誇るコスモス薬品は、M&A(企業の合併・買収)に頼らず自社出店戦略のみで売上1兆円を達成。この独自の成長モデルは、今後も継続すると見られています。収益率では業界トップクラスではないにもかかわらず、株式時価総額ではマツキヨココカラに次ぐ第2位に位置しており、市場がその成長力に高い評価を与えていることが伺えます。
コスモス薬品を追いかけるのが、クスリのアオキ、ゲンキー、そしてサンドラッググループのダイレックスといった企業群です。これらの企業も順調に事業規模を拡大しており、「フード&ドラッグ」業態全体の勢いを裏付けています。消費者にとって、これらの店舗はもはや単なるドラッグストアではなく、「医薬品も扱う食品スーパー」としての利用が定着しつつあります。この実態を踏まえ、本記事では、食品とドラッグを組み合わせた「フード&ドラッグ」を、従来のドラッグストアの枠を超えた「生活必需品小売業」として捉え、そのビジネスモデルに迫ります。
日本のフード&ドラッグ店舗内部、豊富な商品と活気ある買い物風景
食料品売上が牽引!「生活必需品小売業」としての戦略
フード&ドラッグ大手各社の商品別売上構成を見ると、食品の売上比率が軒並み5割から7割を占めており、ゲンキーに至っては食品売上が全体の70%に達しています。店内に並ぶ他の商品と比較して食品の単価は低い傾向にあるため、売場全体の見た目としては、従来の食品スーパーと大差ない印象を与えます。経済産業省の業種分類の定義においても、食品スーパーは「食品売上比率7割超のセルフサービス店」とされており、まさにこれらの「フード&ドラッグ」店舗は、その定義に合致する形態へと進化を遂げていると言えるでしょう。
さらに、これらのチェーン店は10年前までは生鮮食品の取り扱いが限定的でしたが、現在ではコスモス薬品を除く大半の店舗で、生鮮食品が豊富に品揃えされています。これにより、消費者の来店動機はほぼ食品を目的とするものへと変化しています。加えて、医薬品や化粧品、日用雑貨といった生活必需品が幅広く取り揃えられているため、日常生活における利便性では食品スーパーを凌駕すると言っても過言ではありません。このような店舗が地域に増えれば、ドラッグストア以上に食品スーパーの売上に対する影響は避けられないでしょう。
まとめ
コスモス薬品やクスリのアオキが牽引する「フード&ドラッグ」業態は、単なるドラッグストアの枠を超え、「生活必需品小売業」として急速に進化し、小売業界の勢力図を塗り替えつつあります。食品の売上比率を高め、生鮮食品の品揃えを拡充することで、消費者にとって日常的な買い物場所としての地位を確立。医薬品や日用雑貨とのシナジー効果により、従来の食品スーパーやコンビニエンスストアを凌ぐ利便性を提供しています。この「異常な強さ」は、今後の小売業界における主要なトレンドとなり、特に地方・郊外市場でその存在感を一層高めていくと予測されます。
参考文献
- Yahoo!ニュース (biz_plus) 「コスモス薬品・クスリのアオキらの業態が、小売業界の勢力図を塗り替えようとしている…その“異常な強さ”の秘密とは?」
https://news.yahoo.co.jp/articles/fafd17ee3c9ba9d03a785029b4639918be6aab14