「何をやっても心から燃えられない」「夢中になれるものが見つからない」――現代社会において、このような悩みを抱える人々が増えています。明治大学法学部教授の堀田秀吾氏は、この現象を「燃えられない症候群」と名付け、人間としてごく自然な状態であると指摘しています。本記事では、堀田教授の提唱するこの概念と、それに悩む人々の多様なタイプ、そして過去の日本人と比較しながら、その深層に迫ります。
仕事に情熱を持てず、窓の外をぼんやりと見つめるビジネスパーソン
「燃えられない症候群」とは?「燃え尽き症候群」との決定的な違い
堀田秀吾教授が提唱する「燃えられない症候群」とは、「本当は何かに夢中になりたいと願い、自分なりに懸命に行動しているにもかかわらず、なぜか心に火がつかない状態」を指します。この造語は、多くの現代人が抱える内なる葛藤を的確に表現しており、共感を呼んでいます。
この「燃えられない症候群」と混同されがちなのが、「燃え尽き症候群」です。しかし、両者には明確な違いがあります。「燃え尽き症候群」は、一度は強い情熱を持って全てを出し尽くし、その結果として心身ともに疲弊しきってしまう状態を指します。これに対し、「燃えられない症候群」は、そもそも情熱の火を灯すことに苦戦しており、燃え尽きたわけではないのに、なぜか心が熱くならないというもどかしさを抱えているのが特徴です。つまり、まだ「燃える前段階」で立ち止まっている状態と言えるでしょう。
あなたはどのタイプ?「燃えられない症候群」7つの特徴
「燃えられない症候群」に陥る理由は一つではありません。堀田教授は、この状態にある人々を複数のタイプに分類しています。自身の状況と照らし合わせながら、あなたがどのタイプに当てはまるか確認してみましょう。
- 毎日努力しているのに、燃えている実感が湧かない人: 頑張っている自覚はあるものの、達成感や充実感が得られず、心から満たされないと感じるタイプです。
- 少ない労力で結果を出すことを優先し、燃えることを遠ざけてしまった人: 効率やリスク回避を重視するあまり、深い情熱を傾ける機会を自ら手放してしまったケースです。
- 昔は何かに夢中になれたのに、今はその感覚を取り戻せずに困っている人: 過去には熱中した経験があるものの、環境や価値観の変化により、再び情熱を傾ける対象を見つけられないタイプです。
- リスクを避けて生きてきたため、過去に燃えた経験がない人: 失敗を恐れるあまり、情熱を注ぐこと自体を避けてきたため、熱中する感覚を知らないまま過ごしてきた人々です。
- コロナ禍や社会変化で、燃えるきっかけを失ってしまった人: パンデミックや急速な社会変革が、新たな挑戦や目標設定の機会を奪い、情熱を失う原因となったケースです。
- まわりと比べて「どうせ自分なんて」とあきらめてしまう人: 他者の成功と自分を比較し、自己肯定感が低下することで、努力や情熱を注ぐことを諦めてしまうタイプです。
- 「やらなければ」では動けるが「やりたい」が見つからない人: 義務感や責任感から行動はできるものの、心から「これをしたい」と思えるような内発的動機が見つからない人々です。
これらのタイプは独立しているだけでなく、複数の理由が重なり合って「燃えられない症候群」を引き起こしていることも少なくありません。
かつての日本人はなぜ「燃えられた」のか?高度経済成長期の働き方と現代
第二次世界大戦終戦後、日本は敗戦からの復興を目指し、国全体が強い熱意を持って経済活動に邁進しました。特に1950年代後半から1970年代前半にかけての高度経済成長期には、多くの日本人が「がんばって働くこと」を至上の価値とし、会社や国の発展のために文字通り身を粉にして働きました。朝から晩まで働き、休日返上もいとわない働き方が当たり前のように広がり、それが当然であるかのように受け入れられていた時代です。
ここで一つの大きな疑問が生まれます。なぜ当時の人々は、そこまで強い情熱とモチベーションを維持し、がむしゃらに働くことができたのでしょうか?現代の「燃えられない症候群」が広がる社会と、当時の社会との間には、どのような価値観や環境の違いが存在したのか。この問いは、現代人が自身の「燃えられない」状態を理解するための重要な手がかりとなるでしょう。
参考文献:
- 堀田秀吾 (2025). 『燃えられない症候群』. サンマーク出版. (※本記事は本書の一部を再編集したものです)
- iStock.com/mapo (写真提供)
- Yahoo!ニュース (記事元)
- PRESIDENT Online (記事掲載元)