タレントの山田雅人さんは、認知症を患うお母さまの介護を通じて、多くの人が抱える「つらい」という感情を乗り越え、独自の温かい視点を見出しました。東京を拠点に活動しながら、2015年から8年間、大阪と東京を往復する日々の中で、彼は介護を「親による最後の子育て」と捉えることで、その重圧を感謝の気持ちへと変えていきました。この記事では、山田さんがどのようにして介護の新たな価値を発見し、困難な状況を乗り越えてきたのか、その貴重な経験と心温まるエピソードに迫ります。
「つらい」を乗り越える心の変化:母からの「最後の子育て」
山田さんが大阪で担ったのは、おむつ交換や家事全般など、母の身の回りすべてのお世話でした。これは肉体的にも精神的にも大きな負担を伴いますが、彼は「つらい」というネガティブな感情に囚われないよう意識し続けました。そして、「介護を通して、母は最後の子育てをしてくれている」という考えに至った時、介護の景色は一変したと言います。かつてほとんど料理や掃除をしなかった彼が、母の介護を機に家事ができるようになり、これを「母が介護を通して教えてくれたこと」だと感じたのです。また、自分が赤ん坊の頃に母から受けた世話を「すべてお返ししている」という思いが、介護をより前向きなものに変えました。
認知症の母との特別な時間:徘徊対策と映画鑑賞
認知症の進行により、お母さまは昼夜の感覚を失い、夜中に徘徊しようとすることがありました。介護する山田さんは睡眠不足に陥り、心身ともに疲弊する日々を経験します。この困難に対処するため、彼は母を日中に活動させることを心がけました。例えば、一緒に散歩へ出かけ、万歩計で3000歩を目標に歩くなど、穏やかながらも効果的な対策を取りました。
山田雅人さんと認知症の母が手をつなぎ散歩する様子
さらに、母を楽しませると同時に、山田さん自身が休息を取るための工夫として、映画鑑賞を選びました。記憶力低下により複雑なストーリーは追えなくても、母は「1シーンごとの瞬間」を楽しむことができたため、トム・クルーズの『ミッション・インポッシブル』やウィル・スミス主演の『アラジン』のような動きの活発な作品を熱心に鑑賞したそうです。映画館では、まるでデートのように手をつなぎ、母は安心し、山田さんはその間に不足しがちな睡眠を補うことができました。
タレントの山田雅人さんが教えてくれたのは、介護が決して一方的な負担ではないということです。認知症の母との関わりの中で、「最後の子育て」という視点を持つことで、介護は感謝と成長の機会へと変わります。徘徊や睡眠不足といった現実的な課題に直面しながらも、日中の活動を促したり、映画鑑賞という形で二人だけの特別な時間を共有したりすることで、母に寄り添い、自身の心も癒していきました。彼の経験は、介護に悩む多くの人々にとって、新たな気づきと希望を与えるメッセージとなるでしょう。