パリジェンヌに学ぶ「足元」の哲学:ハイヒールから快適なスニーカーへの変化

ルイ・ヴィトンのパリ本社で17年間PRトップを務め、「最もパリジェンヌな日本人」と称される藤原淳氏。彼女の著書『パリジェンヌはダイエットがお嫌い』は、かつて「痩せればすべて解決する」と信じていた著者の認識が、多くのパリジェンヌとの出会いによって根本から覆された経験に基づいています。本書では、自身と向き合い、心身のバランスを整えることで、自分らしい美しさと自信を手に入れるパリジェンヌ流の「神習慣」が提案されています。この記事では、パリジェンヌが実践する魅力的な生き方の秘訣の中から、特に足元の習慣に焦点を当ててご紹介します。

パリジェンヌの足元哲学:ハイヒールからの解放

ある日、著者は同僚のファニーと共にイベントへ向かうことになりました。昇進を機にファッションPRのトップとなったファニーとは親しくなり、行動を共にすることが増えていたのです。ファニーが提案したのは、徒歩30分ほどの道のりを歩いて行くこと。朝からハイヒールを履いていた著者はうんざりしながらも承諾しましたが、次第に足全体に激痛が走り、残念な歩き方になってしまいます。それを見兼ねたファニーは、「朝からハイヒールなんて履いているからよ!」と一言。ファニー自身は、カジュアルで歩きやすいローファーを履いていたのです。

オフィスを見渡せば、普段からショートブーツやローファーを履く女性が多く、ハイヒールは少数派。夏にはバレリーナ・シューズやサンダル、ツッカケのような平らな靴が主流で、イベントの際にようやく見かける程度でした。著者はそれまで「仕事には不適切」と決めつけ、毎日朝から晩までハイヒールを履き続けていた自分に気づかされます。

パリジェンヌの足元哲学:快適さを追求するフラットシューズとスマートなハイヒールの使い分けパリジェンヌの足元哲学:快適さを追求するフラットシューズとスマートなハイヒールの使い分け

ファニーの履き古したローファーを見ていた著者に対し、彼女はバッグから12センチはあろうかというピカピカのパンプスを取り出しました。目的地に到着する寸前、ファニーはさっとハイヒールに履き替え、颯爽と会場へ。足の痛みに顔をしかめ、椅子に座り込んでいた著者に対し、ファニーは飲み物を差し出しながらこう言いました。「足は痛めつけるものじゃなくて、労るものよ」。そして再びローファーに履き替え、「じゃあね」と言い残して帰って行ったのです。この出来事は、著者にとって「パンプスの呪縛」からの解放を意味しました。

スニーカー時代の到来とパリジェンヌの健康習慣

ファニーの姿に習い、著者は「昼はペッタンコ、夜のお出掛けの時だけヒール」というテクニックを取り入れるようになります。すると、フットワークが格段に軽くなり、「ちょっとした距離なら歩いちゃおう」という発想が自然と湧いてくるようになりました。それまで「歩くのは苦痛」と感じていたのは、靴のせいだったのだと気づくと、俄然歩く意欲が出てきたのです。一度ペッタンコの靴に履き替えてしまえば、メトロ1駅、2駅分の距離も平気で歩けるようになりました。

この変化をファニーに打ち明けた際、彼女は「これからはスニーカーの時代よ」と断言。そしてその予言は見事に的中します。約10年前からパリではスニーカーを履く人が急増し、「バスケット」と呼ばれるスニーカーは、スポーツ・メーカーだけでなくハイ・ブランドも力を入れるようになり、あっという間に「なくてはならないファッション・アイテム」の地位を確立したのです。

著者の靴箱にあったハイヒールは埃をかぶり、代わりにスニーカーの量が増えていきました。ヒールからフラットシューズ、そしてスニーカーへと移行した著者は、パリジェンヌのように「一日1万歩」を達成できるようになり、長年悩まされていた胃の痛みも改善しました。この変化が、マラソンに参加する日への第一歩になるとは、当時の著者は夢にも思っていませんでした。

結論

パリジェンヌの「足元」の哲学は、見かけの美しさだけでなく、身体への優しさと快適さを追求する生き方を象徴しています。ハイヒールを「特別な日のためのアイテム」とし、普段使いにはフラットシューズやスニーカーを選ぶことで、日々の活動性が高まり、心身の健康へと繋がるのです。藤原淳氏の経験は、私たちがいかに無意識のうちに自分を「呪縛」しているかを示し、パリジェンヌ流の賢い選択が、より豊かで自信に満ちた生活へと導くことを教えてくれます。足元から始める、最高の自分になるための習慣をぜひ取り入れてみてください。

参考文献

  • 藤原淳 著『パリジェンヌはダイエットがお嫌い』