中国・天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議は1日、「多国間協調」を掲げる「天津宣言」を採択し閉幕しました。中国の習近平国家主席は会議で、米トランプ政権の「米国第一主義」的な高関税措置を念頭に「いじめ行為に反対する」と強く主張。新興国や途上国から成る「グローバル・サウス」を主導する姿勢を鮮明にしました。この動きは、既存の国際秩序における中国の影響力拡大と、より公正な多極的世界の構築を目指すSCO加盟国の連携強化を示唆しています。
上海協力機構首脳会議で並んで歩くプーチン大統領、モディ首相、習近平国家主席。多国間協調を議論
「天津宣言」の採択と「多極的世界」への志向
今回の会議で採択された「天津宣言」は、SCO加盟国が「より公正な多極的世界」の構築を目指すことを確認しました。特に注目されるのは、「加盟国は世界貿易機関(WTO)の原則に違反する経済措置を含む一方的な強制措置に反対する」という文言が盛り込まれた点です。これは、米国の保護主義的政策や一方的な経済制裁に対する明確な牽制と受け止められています。会議には、ロシアのプーチン大統領、インドのナレンドラ・モディ首相、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領らが顔を揃え、トランプ政権の「米国第一主義」とは距離を置く国々の首脳が一堂に会した形となりました。
習近平主席のリーダーシップとプーチン大統領の評価
習近平国家主席は会議で、SCOの「国際的な影響力は日増しに高まっている」と強調し、加盟国間の結束を呼びかけました。さらに、中国が今年中に加盟国に対して20億元(約410億円)の無償援助を行うことを約束し、具体的な経済的支援を通じてリーダーシップを発揮する意向を示しました。一方、ロシアのプーチン大統領は、「ウクライナ危機の解決に協力する中国、インド、その他の我々の戦略的パートナーの国々の努力を評価する」と述べ、両国の支援に対する謝意を表明しました。ただし、宣言自体はウクライナ情勢に直接言及しませんでした。
SCO会合後の動向:歴史的記念行事への参加
今回のSCO首脳会議に参加したプーチン大統領ら一部の首脳は、3日に北京の天安門広場で行われる「抗日戦争勝利80年」の軍事パレードにも出席する予定です。これは、国際的な連帯を示すとともに、歴史認識を共有する国々との関係を強化する中国の意図を反映していると見られます。
結論
上海協力機構首脳会議は、「天津宣言」を通じて多国間協調と「より公正な多極的世界」への明確な志向を示しました。習近平国家主席の「グローバル・サウス」主導の姿勢と、米国の一方的な経済措置への反対表明は、今後の国際政治・経済秩序に大きな影響を与える可能性があります。SCOの国際的影響力の拡大と加盟国の結束強化は、世界情勢における新たな勢力図を描き出すものとして注目されます。
参考資料
- 読売新聞オンライン (2025年9月1日). 「上海協力機構首脳会議、米への対抗姿勢鮮明化と『天津宣言』採択」. https://news.yahoo.co.jp/articles/8c31c595552838657d976b410fe4f6f7bf665944