定年後再就職の落とし穴:年収2,000万円の超エリートが居酒屋で直面する現実とは?

老後資金の確保や健康維持といった目的から、定年退職後も仕事を続けるシニア層が増加しています。中には、金銭的な余裕があり、老後の生活に問題がないと見られる人物でさえ再就職を選ぶケースも少なくありません。しかし、現役時代の輝かしい経歴と培われたプライドが、新たな職場環境で思わぬ「足かせ」となってしまうことがあります。本記事では、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が、Aさんの事例を通して定年後の再就職先でのトラブルとその注意点について解説します。

定年後も意欲的に働くシニア世代のビジネスマンのイメージ定年後も意欲的に働くシニア世代のビジネスマンのイメージ

年収2,000万円超の「超エリート」が陥る意外な再就職の落とし穴

国税庁の「2022(令和4)年分民間給与実態統計調査」によると、民間企業に勤務する給与所得者のうち、年収1,500万円超2,000万円以下の層は全体の0.8%、年収2,000万円超2,500万円以下の層は0.3%と、年収2,000万円前後の人々は全体のわずか1.1%に過ぎません。これはいわば「超エリート」と称される層ですが、彼らの中にも定年退職後に“意外な場所”を再就職先として選ぶケースが見られます。

居酒屋店長に転身したAさんの「輝かしい過去」と待ち受ける「驚きの事態」

居酒屋の店長を務めるAさん(40歳)は、年収500万円と高収入とは言えないものの、生活に不自由はありません。学生時代からアルバイトとして働いていたこの居酒屋で、若くして店長に抜擢され、そのまま社員となりました。Aさんがアルバイトを始めた当初、店は売上が伸び悩み慢性的な赤字経営で、いつまで続くか囁かれていました。しかし、Aさんは学生ながら「大人の隠れ居酒屋」をコンセプトに雰囲気作りを一新し、新メニューを発案するなど店内改革を断行。その手腕が評判を呼び、数年で集客を3倍にまで伸ばし、街で評判の人気店へと成長させたのです。大学で経営コンサルティングを学んでいたAさんは当初一般企業への就職を考えていましたが、飲食店経営の現場にやりがいを感じ、この仕事を中途半端に終わらせられないと、そのまま就職を決意しました。その後も、需要に合わせたリニューアルを定期的に行い、安定した店舗運営で常連客を増やし、長年黒字経営を続けていたAさんでしたが、そんな彼を驚愕させる事態が起こるのでした……。

結論

定年後の再就職は、老後の生活の質を高める選択肢となる一方で、過去のキャリアやプライドが新たな職場での人間関係や業務遂行の障害となり得ることを示唆しています。特に高い経験と地位を持つ「超エリート」層が、異なる環境での再出発を果たす際には、自身の価値観や期待値を柔軟に見直すことが不可欠です。Aさんの事例は、年齢や経歴に関わらず、新しい環境での適応力が成功の鍵を握ることを浮き彫りにしています。

参考資料