韓国高齢者の年金受給額、最低生計費の半分以下に:深刻な男女間格差も浮き彫り

【ソウル発】韓国の高齢者層において年金受給が拡大しているものの、その金額は依然として最低生計費に遠く及ばない水準にとどまっていることが、最新の統計で明らかになりました。さらに、受給額における男女間の大きな格差も浮き彫りとなり、老後の経済的安定に向けた課題が深刻化しています。

年金受給者の増加と受給額の現状

統計庁が2023年8月25日に発表した「2023年年金統計結果」によると、基礎年金、国民年金、職域年金(公務員、私学、軍人年金など)のいずれかを受給する65歳以上の人口は863万6000人に達しました。これは前年から45万4000人(5.6%)増加したもので、65歳以上の全体に占める受給者の割合は90.9%と、前年より0.5ポイント上昇しています。

しかし、これらの受給者が受け取る月平均受給額は69万5000ウォン(約7万3958円)で、2022年の65万ウォン(約6万9160円)から4万5000ウォン(約4788円)増加したものの、中央値は46万3000ウォン(約4万9263円)にとどまっています。2023年基準の最低生計費(1人世帯124万6453ウォン=約13万2573円、2人世帯207万3693ウォン=約22万0575円)と比較すると、平均受給額はその半分程度に過ぎず、多くの高齢者が経済的に困難な状況にあることが示されています。

深刻な男女間格差と年齢別の傾向

年金受給額における男女間の格差も顕著です。男性の月平均受給額が90万1000ウォン(約9万5866円)であるのに対し、女性は51万7000ウォン(約5万5049円)と、男性が約1.7倍多い状況です。年齢別では、65〜69歳の層が最も高く80万7000ウォン(約8万5895円)でした。

統計庁のチェ・ジェヒョク行政統計課長は、この男女間の受給額格差について、「女性は基礎年金受給が中心で物価上昇分のみ反映されるため増額幅が小さいが、男性は国民年金の加入期間が長くなる層が増え受給額も大きくなり、格差が拡大している」と説明しています。これは、女性の労働市場におけるキャリア中断や非正規雇用の割合の高さが、老後の年金受給に長期的に影響を与えている実態を浮き彫りにしています。

年金制度への加入状況と今後の課題

年金を受け取れない65歳以上の非受給者は86万人で、前年より4000人減少しました。一方で、18〜59歳の年金加入者は2374万1000人で、前年より9万8000人減少しましたが、加入率は81.0%と0.8ポイント増加しています。月平均保険料は34万4000ウォン(約3万6622円)で、前年より1万ウォン(約1064円)増えました。

これらの統計は、韓国の年金制度が直面する二重の課題を示唆しています。一つは、受給者数の増加にもかかわらず、多くの高齢者が最低限の生活を維持するための十分な年金を受け取れていないという経済的脆弱性です。もう一つは、男女間の所得格差が年金受給額に直接反映され、女性高齢者の貧困リスクを高めている点です。今後の社会保障政策においては、これらの課題に対し、より実効性のある対策が求められます。


参考文献:

  • 統計庁「2023年年金統計結果」(2023年8月25日発表)
  • KOREA WAVE/AFPBB News (2024年9月2日)