金正恩氏訪中に金ジュエ氏同行か?後継者観測と国際情勢の焦点

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が、中国・北京で3日に開催される「抗日戦争勝利80年」軍事パレードに出席するため出発しました。今回の訪中において、特に国際社会の注目を集めているのは、金総書記の娘である金ジュエ氏が同行するか否かです。もしジュエ氏が中国の最高指導者である習近平国家主席と会談する運びとなれば、それは彼女が正恩氏の後継者として位置づけられている可能性を強く示唆するものとなり、北朝鮮の将来を巡る観測に大きな影響を与えるでしょう。

金ジュエ氏同行の注目点と後継者観測

朝鮮中央通信によると、金正恩総書記は1日に北京に向けて出発しました。過去の事例を見ると、正恩氏は政権発足後、計4回中国を訪問しており、そのうち3回は妻の李雪主(リ・ソルジュ)氏が同行しています。韓国の通信社「ニュース1」は、首脳外交における慣例と儀典上、夫婦同伴が自然であるとし、今回も李氏が同行する可能性が高いと報じています。しかし、北朝鮮国営メディアや朝鮮労働党機関紙「労働新聞」の2日夜までの報道では、金ジュエ氏の同行は確認されていません。

李雪主夫人と金与正氏を上回る待遇

金ジュエ氏は2022年11月、金正恩氏が新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験を現地指導した際に、初めて国営メディアに登場しました。それ以降も、軍事パレードや軍事訓練など、数々の重要な軍事分野のイベントに金正恩総書記と同行しています。報道では、式典の場において、李雪主夫人や正恩氏の妹である金与正(キム・ヨジョン)党副部長よりも「格上」の立ち位置にいる様子が伝えられており、これらの露出が増えるにつれて、ジュエ氏が将来の最高指導者候補、つまり後継者であるとの観測が強まっています。

金正恩総書記と娘ジュエ氏、駆逐艦進水記念公演で並ぶ金正恩総書記と娘ジュエ氏、駆逐艦進水記念公演で並ぶ

北朝鮮後継者情報の把握の難しさ

しかし、北朝鮮の後継者の動向を正確に把握することは、これまでも非常に困難な課題でした。過去には、2011年5月に聯合ニュースが、当時政権ナンバー2であった金正恩氏が中国を単独訪問したと報じましたが、後にこれが誤報であったと判明したケースがあります。当時、多数のメディアが聯合ニュースを引用し、日本メディアを含む複数の報道機関が韓国政府情報筋の情報として報じたことは、情報収集の難しさを浮き彫りにしました。洪鉉翼(ホン・ヒョンイク)元外交院長はニュース専門テレビYTNの1日の番組で、もし金ジュエ氏が同行した場合、「全世界の視線がジュエ氏に注がれる」と指摘しました。そのため、中国側への配慮として、彼女が「非公式の随行員として表に出ない形で同行する可能性もある」との見解を示しています。

今回の金正恩総書記の訪中と金ジュエ氏の同行の可能性は、単なる外交儀礼以上の意味を持ちます。北朝鮮の未来のリーダーシップ構造、ひいては朝鮮半島および東アジア地域の安全保障情勢に深く関わる重要な焦点として、引き続き国際社会の注目を集めることでしょう。

参考文献