政治ジャーナリストの田崎史郎氏は、先日開催された自民党両院議員総会における森山裕幹事長の言動に対し、党内での評価が「ガタガタと落ちた」と厳しく指摘しました。参院選の大敗という重い現実を前に、党幹部たちの対応に「温度差」が見られる中、森山氏の「進退伺い」が、かえって党内の不信感を募らせる結果となったと分析しています。
2日に開かれた自民党の両院議員総会では、首相が参院選の大敗について陳謝し、自身の進退について「しかるべき時に決断する」と述べるに留まりました。一方、森山裕幹事長、小野寺五典政調会長、鈴木俊一総務会長、木原誠二選対委員長の党4役は一斉に辞意を表明。しかし、この「辞意表明」の内情には、大きな違いがあったとされます。
自民党両院議員総会:敗北の責任と幹部の動向
参院選での歴史的敗北を受け、自民党は国民の信頼回復に向けた重要な局面を迎えています。総会では、党の顔である首相が敗北の責任を痛感しつつも、具体的な進退表明を避ける姿勢を示しました。これは党内の混乱を避けるためとも解釈できますが、同時に、責任の所在を曖昧にするものだという批判も一部では上がっています。
森山幹事長の評価に関する見解を述べる政治ジャーナリスト田崎史郎氏
党4役の辞意表明は、敗北の責任を取る姿勢を示すものとして注目されましたが、その詳細には違いがありました。特に、森山幹事長が選んだ「進退伺い」という形は、他の幹部の対応とは一線を画すものであり、後に党内での波紋を呼ぶことになります。
「進退伺い」と「辞表提出」:幹部間の「温度差」
TBS系「ひるおび」に出演した田崎史郎氏は、MCの恵俊彰氏からの質問に対し、党幹部4人の「温度差」を詳細に解説しました。田崎氏によると、「進退伺い」とは、失敗などをした際に自身が辞めるべきかを上司に相談し、身柄を預けるという意味であり、「辞表提出」とは明確に異なります。
木原誠二氏と小野寺五典氏は「辞表を提出」、鈴木俊一氏は「辞意を伝えた」のに対し、森山裕幹事長は「進退伺い」という形を取りました。田崎氏は、この森山氏の対応について、「きのうの森山さんの言動を見ると、森山さんは一緒に残りたかったのかなあと」と分析。その上で、「ボクはちょっと見苦しいなと思ったんですけど」と自身の見解を述べ、森山氏の真意に対する疑念を表明しました。この発言は、単なる手続き上の違いだけでなく、幹部個人の責任感や今後の党内での立ち位置に対する思惑が絡んでいることを示唆しています。
森山幹事長への評価急落:見苦しさと不信の背景
田崎氏の分析によると、森山氏の「進退伺い」という対応は、自民党内で彼の信頼を大きく損なう結果となりました。「森山さんに対する評価がガタガタと落ちてきましたよね、自民党の中で。森山さんが辞めてくれると思ってた人も少なくないわけですよ。」と田崎氏は語り、これまで党内で厚い信頼を得ていた森山氏への失望感が広がっていることを明らかにしました。多くの党員が幹事長の辞任を当然視していたにもかかわらず、進退伺いという形で「残りたい」という本音が透けて見えたことが、不信感に拍車をかけたと言えます。
さらに、昨年の衆院選での「政治と金」の問題が再燃し、森山氏への追及が強まりました。非公認の前議員の所属支部に2000万円が支給された問題は、自民党の大敗の要因の一つと指摘されています。総会でこの問題について議員2人から追及された森山氏の答弁は、「手続きに瑕疵(かし)はなかった」という「木で鼻をくくったような答弁」でした。田崎氏は、「あれで大敗したっていうのが自民党議員の認識なんですけども、配ったとみられる森山さんはきのう、まともに答えなかったというのが自民党議員の受け止め方」と話し、不透明な資金問題への誠実な対応が見られなかったことが、彼の評価を決定的に落としたと強調しました。
自民党が国民の信頼を取り戻すためには、幹部たちの責任の取り方、そして「政治と金」の問題への透明性のある説明が不可欠です。森山氏のケースは、党内の幹部人事、そして今後の党運営において、重要な課題を投げかけています。
参考資料
- TBS系「ひるおび」
- Yahoo!ニュース
- デイリースポーツオンライン