不動産小口化投資商品「みんなで大家さん」を巡り、主力の「シリーズ成田」が分配金の支払いを停止し、約4万人の個人投資家から集めた2000億円あまりの資金に不安が広がっています。運営元の共生バンクグループは、換金性の高い不動産を保有していると主張し、資金調達による分配金再開を目指していますが、その実態と売却の困難さが日経不動産マーケット情報の取材で明らかになりました。
「みんなで大家さん」:成田ファンド分配金停止の背景
「みんなで大家さん」は、個人投資家から少額の資金を集め、複数の不動産を共同で所有するクラウドファンディング形式の投資商品です。その主力である「シリーズ成田」は、2025年7月末に予定されていた分配金が支払われず、投資家の間で動揺が広がりました。これを受け、共生バンクグループの栁瀨健一社長は8月9日に釈明の動画メッセージを公開。8月末の配当再開に向けて、保有物件の売却または担保提供による資金調達を進める意向を表明し、8月22日の第2弾メッセージでは「死守する覚悟」を示しました。
栁瀨社長はメッセージの中で、「グループが保有する複数の不動産の売却や借り入れによって、その予算をまかなうべく現在4社と商談を重ねている」と説明。「配当の原資として今月の支払いに間に合うよう、最善の努力を続けている」と強調しました。
共生バンクが主張する「換金性資産」の分析
栁瀨社長は、成田プロジェクト以外にも約600億円相当の換金性の高い不動産を保有していると主張しています。しかし、日経不動産マーケット情報が接触した投資家によると、払込期日の8月29日15時時点になっても、「シリーズ成田」の分配金は停止されたままでした。
共生バンクグループが主張する換金性資産の内容は、同情報の取材で明らかにされており、大阪、東京、軽井沢、千葉に所在する4物件が含まれています。これらの物件は全てグループ会社の都市綜研インベストバンクが保有しているものです。
共生バンクグループが保有を主張する宗右衛門町モータープール(大阪)を西側から撮影
日経不動産マーケット情報が複数のルートから入手した販売資料(概要書)を分析すると、これらの物件の売却は一筋縄ではいかない状況が想定されます。中には仕入れ値を大幅に上回る価格での売却を期待している土地や、裁判で係争中である土地も含まれており、現金化には 상당한時間と労力を要する可能性が高いと見られています。
共生バンクグループの財務状況と今後の課題
共生バンクグループの財務状況は、今年の春先から深刻化しているとの情報が漏れ聞こえていました。資産売却に向けて各方面に働きかけている様子は業界関係者の間で広く共有されており、資金調達の難航が今回の分配金停止に繋がったと推測されます。
現在も分配金が再開されていない状況は、投資家への信頼回復にとって大きな課題となっています。グループが主張する換金性資産の売却が計画通りに進むか、そしてそれが滞った分配金の支払いに間に合うのか、今後の動向が注目されます。
結論
「みんなで大家さん」の分配金停止問題は、約4万人の個人投資家に深刻な影響を与えています。共生バンクグループが資金調達のため保有資産の売却を目指すものの、その「換金性資産」の実態は複雑であり、売却には多くの課題が伴うことが判明しています。財務状況の悪化が囁かれる中、グループが投資家への約束を果たすことができるのか、その透明性と迅速な対応が強く求められています。本件は不動産小口化投資の健全性にも一石を投じる事態であり、今後の進展は多くの関係者から注視されるでしょう。
参考資料
- 日経不動産マーケット情報 (Yahoo!ニュース記事情報)