「俳優は逮捕されるのにサントリー会長は逮捕されないのはなぜか?」「上級国民だから逮捕されないのか」——。人気俳優の清水尋也氏が麻薬取締法違反の疑いで逮捕された一方、サントリーホールディングス会長職を辞任した新浪剛史氏が違法サプリメント疑惑に関し「潔白だ」と主張したことで、SNS上ではこのような疑問や“陰謀論”が噴出しています。本稿では、この二つの事案における法的な判断の相違点と、それぞれの背景にある真相を詳しく解説します。
サントリーホールディングス会長を辞任した新浪剛史氏、違法サプリメント疑惑の渦中に
新浪氏の「潔白」主張と疑惑の経緯
サントリーホールディングス前会長の新浪剛史氏は、9月1日付で会長職を辞任しました。これは大麻草成分「THC(テトラヒドロカンナビノール)」を含む違法サプリメントの輸入疑惑が浮上したことによるものです。定例会見で新浪氏は騒動を謝罪しつつも、「法を犯しておらず潔白だ」と無罪を主張しました。氏の弁明によると、出張先のアメリカで知人から勧められたサプリを「適法な商品と認識していた」とのことです。この知人の関係者が違法薬物の輸入容疑で逮捕されたことで、新浪氏に疑惑の目が向けられました。
捜査当局が見た「逮捕されない理由」
新浪氏が「上級国民だから逮捕されない」という憶測が飛び交う中、全国紙社会部記者によると、逮捕に至らなかった明確な理由があります。新浪氏の証言では、知人から郵送されたサプリは家族によって既に廃棄されており、2回目の郵送についても「自分が依頼したものではなく、違法サプリだったかもわからない」と、国内での所持や使用を否定しています。さらに、8月下旬には都内の自宅に家宅捜査が行われましたが、違法薬物は発見されず、尿検査も陰性という結果でした。つまり、現時点では「立件できる証拠がなかった」と判断するのが妥当であり、「上級国民」であるか否かとは無関係に、法的な証拠の有無が逮捕の基準となっているのです。
俳優・清水尋也氏逮捕の明確な根拠
一方、俳優の清水尋也氏は9月3日に麻薬取締法違反の疑いで逮捕されました。清水氏のケースでは、1月の時点で既に警視庁に情報提供があり、内偵調査が継続されていました。逮捕時の自宅捜索では、大麻とされる乾燥植物片や巻紙が発見されています。今回は所持による逮捕ですが、今後は「使用」での再逮捕も視野に入れられているとのこと。このように、清水氏の場合は具体的な違法薬物が自宅から見つかり、長期間の内偵調査に基づく明確な証拠があったことが逮捕に繋がりました。
逮捕なき辞任の背景にあるもの
新浪氏が法的には「潔白」を主張し、逮捕に至らなかったにもかかわらず、会長職を辞任する必要があったのはなぜでしょうか。サントリーは酒類や飲料に留まらず、多岐にわたる事業を展開するグローバル企業です。会長の「違法サプリ」疑惑は、たとえ個人の問題であっても、企業のブランドイメージや社会的信頼を大きく損ないかねない極めて重大な事案と認識されたためです。企業のトップとして、自身の行動が会社全体に与える影響を考慮し、辞任という選択に至ったと考えられます。
結論
今回の二つの事案から、逮捕の判断は「上級国民」といった社会的地位ではなく、あくまで「立件できる客観的な証拠の有無」に依るものであることが明確になりました。新浪氏のケースでは証拠不十分、清水氏のケースでは明確な証拠があったという法的な違いが存在します。また、企業トップの倫理観と、その行動がブランド価値に与える影響の大きさが、逮捕の有無とは別に社会的責任を問われる結果に繋がることを示唆しています。