出世して給与アップや、やりがいのある仕事をしたいと考える会社員は少なくありません。しかし、いざ管理職になった途端、飲み会の負担額が増えたり、勤務時間が長くなったり、あるいは残業代が支給されなくなったりと、昇給したにもかかわらず「結局損なのでは?」と感じるケースも存在します。本記事では、管理職になることの具体的なメリットとデメリットをデータに基づいて整理し、「管理職は損なのか得なのか」という多くの人が抱く疑問に迫ります。
管理職の昇進とそれに伴う年収の変化、残業代の有無、飲み会費用の増加を示すイメージ。非役職者と係長・課長・部長の平均年収比較も連想させる。
管理職の役割と変化する責任範囲
管理職になると、自身の業務に対する責任だけでなく、部下の指導・育成、人事評価、部門全体のマネジメントや重要な意思決定への関与など、その役割は大きく広がります。これにより、精神的なプレッシャーが増大し、長時間労働や予期せぬトラブル対応に追われることも珍しくありません。また、多くの企業で管理職は「管理監督者」と見なされ、労働基準法の規定により残業代が支給されないケースが多々あります。時間外労働に対する報酬が発生しないというこの仕組みが、「管理職は割に合わない」と感じる大きな要因の一つとなっています。
管理職と非役職者の平均年収の違い
管理職は残業代が支給されない場合があるとはいえ、一般的には非管理職に比べて給与水準が高い傾向にあります。厚生労働省が公表した「令和6年 賃金構造基本統計調査」によると、役職ごとの平均年収は以下の通りです。
- 非役職者:約485万円
- 係長級:約658万円
- 課長級:約824万円
- 部長級:約979万円
これらのデータから、管理職になることで年収面においては確かに大きな「得」があると言えるでしょう。
管理職になるメリットとデメリット
管理職という立場は、年収だけを見れば魅力的に映りますが、実際にはメリットとデメリットの両面が存在します。主な点をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
管理職のメリット
- 収入の増加
前述の通り、管理職は非管理職よりも年収水準が高くなる傾向にあります。年収が増加すれば、日々の生活にゆとりが生まれ、将来に向けた資産形成においても有利になるでしょう。 - 社内外での評価やステータスの向上
名刺や肩書に「課長」「部長」といった役職が記載されることで、社内外における信用度が高まります。これが円滑な業務遂行につながり、責任ある立場として周囲から認められることが、自身の仕事への大きなやりがいとなる人も多いです。 - 高度なマネジメントスキルの習得
部下の育成、チーム戦略の立案、予算管理など、非役職者では経験できない多岐にわたるスキルが身につきます。これらの経験は、将来的なキャリアアップや転職、さらには独立を考える上での強力な武器となります。
管理職のデメリット
- 勤務時間の自由度低下
会議への参加、部下からの相談対応、突発的なトラブル解決など、自身のスケジュールを自由に組むことが難しくなります。定時退社や有給休暇の取得が困難になり、プライベートの計画が立てにくくなるケースも少なくありません。 - 飲み会代や交際費の負担増
部下や取引先との飲み会において、支払いを多めに負担する場面が増える傾向にあります。これまで3000円程度だった自己負担が1万円近くに跳ね上がれば、その回数次第ではかなりの出費増となり、家計を圧迫することもあります。 - 責任範囲の拡大と精神的負荷
業務の成功・失敗はもちろん、部下のミスも含め、最終的な責任を負う立場となります。人間関係の調整や顧客からのクレーム対応など、ストレス要因が大幅に増加し、精神的な負担が大きくなることも珍しくありません。
結論
管理職になることは、年収増加やスキルアップといった明確なメリットがある一方で、残業代の不支給、交際費の負担増、そして精神的ストレスの増加といったデメリットも伴います。昇進が必ずしも「得」だけをもたらすわけではなく、個人の価値観やライフステージによって「損」と感じる側面も存在することを理解しておくことが重要です。管理職を目指す際には、これらの多角的な側面を総合的に考慮し、自身のキャリアプランに合致するかどうかを慎重に判断することが求められます。
参考文献
- 厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」
- Source link: ヤフーニュース(元の記事へのリンク)