日本全国で日常的に利用されるフードデリバリーサービス、ウーバーイーツ。その利便性が評価される一方で、サポート体制に対する利用者や配達員からの不満が深刻化している。特に、公式X(旧Twitter)やYouTubeチャンネルのコメント欄は、トラブル解決を求める声や運営への苦情で溢れており、サービス運営の課題が浮き彫りとなっている。
ウーバーイーツのサポートセンターは、警察への届け出が必要な交通事故や事件以外のトラブルにおいて、電話での対応をほとんど行わないことで知られている。詳細な状況を文章で送信しても、瞬時に定型文が返信されることが常であり、利用者からは「何もサポートしてくれない」という声が多数上がっている。ギグワーカーライターでありウーバーイーツ組合委員長も務める渡辺雅史氏は、当初はこのサポート体制に強い不満を感じていたものの、今では「サービス業であれば通常、お金を払って利用する客へのサポートは手厚いものだが、ウーバーイーツの場合、注文者にも配達員にも『塩対応』なのはある意味平等」と、感覚が麻痺するほどストレスが蓄積していると指摘する。
サポート体制の現状とユーザーの不満の矛先
現状のウーバーイーツのサポートシステムでは、トラブル発生時のストレスが大きく、苦情を送っても定型文しか返ってこないため、運営に対する不満を直接ぶつける場が事実上存在しない。その結果、多くの利用者や配達員が、ウーバーイーツジャパンの公式XやYouTubeチャンネルを「不満のはけ口」として利用している。これらの公式アカウントでは、キャンペーン告知や配達エリア拡大のお知らせが投稿されるたびに、内容とは無関係の苦情コメントが殺到する状況が常態化している。
Uber Eatsの公式Xアカウントに投稿された、配達員や利用客からの不満や苦情が書き込まれたコメント欄の様子
公式Xに溢れる多様な不満の声
公式Xには、配達員と注文者の双方から、サービス運営への厳しい意見が寄せられている。
配達員からの切実な訴え
特に目立つのが、配達員の労働環境と報酬に関するコメントだ。ある配達員は「芸能人に広告の出演料を払う前に配達員に還元しろ」と投稿している。35度を超える猛暑の中を3km以上自転車で走行しても500円にも満たない報酬しかもらえない現状と、多額の広告費を投入している企業姿勢との乖離に、多くの配達員が不満を抱いていることがうかがえる。ギグワーカーとしての過酷な労働実態が、このような形で噴出している。
注文者からのサービス品質への懸念
注文者からのコメントも深刻な内容が多い。2024年12月中旬に投稿されたと思われる「配達員の単価を低く設定しすぎているのか商品が届かないです」というコメントは、年末年始の配達員不足がメディアで報じられる数週間前から、すでにその兆候が現れていたことを示唆している。ウーバーイーツが需要増大期への対策を怠っていた可能性を感じさせる一例だ。
また、「クーポンが使えない件で問い合わせていますが返信がありません。決済前の画面で使用可能なプロモーションがあると表示されるのに、その先でクーポンが選択できない状態です」といった技術的な不具合に対する苦情も頻繁に見られる。これは金銭的な損失に直結するため、利用者にとっては特に切実な問題だ。配達員アプリにも自転車配達の登録者が自動車専用道路を走行するよう指示されるナビのバグがあるなど、システム上の問題も複数報告されている。
公式YouTubeチャンネルにも見られる問題の根深さ
ウーバーイーツの公式YouTubeチャンネルのコメント欄も、Xと同様に荒れる傾向にある。
2025年7月末に投稿されたと思われる配達員からのコメントに、「こんな中、320円で配達をさせる鬼畜企業」というものがある。「暑くて外に出るのがきつい季節はウーバーイーツでいいんじゃないの」といった内容のCM動画に対し、猛暑の中での低報酬配達の過酷さを訴える声が寄せられた。これは、企業が描く理想的なサービスイメージと、現場の現実との大きなギャップを浮き彫りにしている。
注文者からも「数回利用したが、トラブルが発生した時、その解決のために消費者がアクセスする手段がほぼ無い。誰も責任取らない。消費者は泣き寝入りを強いられる」といった、サポート体制全般に対する根本的な不満が上がっている。注文者だけでなく、配達員も「この注文はお客さんが〇分前に注文された商品です」といった情報が表示されないため、最短距離で商品を受け取って届けたとしても配達が遅いと評価され、理不尽な評価に泣き寝入りを強いられるケースがあるという。
さらに、驚くべきことに、こうした不満は日本に限ったことではない。2025年2月にアメリカのウーバーイーツCM動画のコメント欄に英語で書かれていたものを翻訳した「注文した品のひとつが間違って届きました。Uber Eatsに電話して苦情を申し立てましたが、どうやら無視されているようです。その日はランチだったのですが受け取れず、ランチも食べませんでした」というコメントは、ウーバーイーツが世界中のどこでも、ある意味「平等に」ストレスのたまりやすいサービスを提供している実態を示している。
結論:求められる透明性と対話の機会
ウーバーイーツのサポート体制における問題は、単なる個別トラブルの範疇を超え、サービス全体への信頼性に関わる構造的な課題となっている。利用者と配達員の双方からの不満が公式SNSという公の場で噴出し続ける現状は、運営側がこれらの声に真摯に耳を傾け、より実効性のあるサポートチャネルを確立する必要があることを強く示唆している。定型文ではない、個別の状況に応じた柔軟な対応と、トラブル解決に向けた透明性の高いプロセスが提供されなければ、ユーザーのサービス離れは避けられないだろう。