将棋界の注目を集める王座戦第一局が、4日よりシンガポールで幕を開けました。対局に先立ち、藤井聡太七冠(23)はシンガポールのグルメや観光を満喫する様子を見せています。なぜこの歴史的なタイトル戦が、遠く離れたシンガポールで行われることになったのでしょうか。その背景には、将棋の国際的な普及を目指す熱い思いが込められています。
藤井聡太七冠、シンガポール満喫:対局前のリラックスタイム
将棋界の頂点を争う若き天才、藤井聡太七冠と伊藤匠叡王(22)は、2日、王座戦の舞台となるシンガポールに到着しました。藤井七冠は現地メディアに対し、「現地の人にも将棋の面白さ、魅力が伝えられるような内容の将棋にできれば」と抱負を語っています。
まず二人が向かったのは、「ホーカーセンター」と呼ばれる地元の屋台が集まる場所。藤井七冠は真剣な表情で屋台を選び、何を食べようかと長考を重ね、最終的に水餃子を注文しました。普段の対局では見ることのできない、リラックスした食事シーンは非常に貴重です。「皮がすごくモチモチしていて、おいしいです。思った以上に結構ボリュームがありました」と感想を述べています。一方の伊藤叡王は、冷えたスイカジュースを選び、「すごく甘くて、冷えていておいしいと思います」と語りました。その後、二人は観光地を訪れ、対局前のひとときを心ゆくまで楽しんだようです。
シンガポールでの王座戦開幕を前に、現地の屋台で食事を楽しむ藤井聡太七冠
海外対局の狙い:将棋の魅力を世界へ
2年ぶりとなる海外でのタイトル戦開催には、どのような意図があるのでしょうか。将棋ライターの松本博文氏は、将棋界が長年抱える「将棋を世界に広めたい」という課題が背景にあると指摘します。「将棋界の長年の課題として、将棋を海外にいかに広めていくかというものがあります。その一環として、実際に現地で対局に触れていただく機会が設けられれば、普及につながるでしょう」。現地の観衆がトップ棋士の対局を間近で体験することで、将棋への関心を高め、新たなファン層を開拓することが狙いです。
ベトナムでの反響:藤井七冠は「神でありアイドル」
海外で対局を行うことが具体的にどのような効果をもたらすのか。2年前、ベトナムのダナンで行われた藤井七冠の対局を観戦したベトナム将棋倶楽部のタックさん(21)は、その影響を語ってくれました。「ダナンでの対局後、ベトナムでは将棋を知って始める人が増えました。私が関係する倶楽部では、10人ほど新しいメンバーが入りました。ベトナムの棋士にとって、藤井さんは神のようでもあり、アイドルのような存在でもあります」。
藤井七冠の活躍が直接的な刺激となり、将棋を始める若者が増加したのです。タックさん自身もその一人で、ベトナム国内のタイトル戦に挑戦し、見事2冠に輝くという「ベトナムの藤井聡太」と称されるほどの活躍を見せています。タックさんの今の夢は、「藤井さんと対局すること」ですが、「彼が強すぎるので、現実味はありません。これから、たくさんのベトナム人が将棋を知って始めてほしいです」と、将棋普及への熱い思いを語りました。
シンガポールで開幕した王座戦は、単なるタイトル戦以上の意味を持ちます。この対局が、ベトナムの事例のように、現地の人の心を強く掴み、将棋の国際的な普及に新たな一歩を刻むことができるのか、世界中が注目しています。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: 「藤井聡太七冠は神でありアイドル」海外で広まる将棋人気 シンガポールで王座戦なぜ. (2025年9月4日). https://news.yahoo.co.jp/articles/8c4ae0eb85e99a773cc1f65c1a7848d0479faab3