米議会上院財政委員会が9月4日に開催した公聴会で、ケネディ厚生長官のワクチン政策に対し、与野党双方の議員から強い疑念と批判が相次ぎました。特に、疾病対策センター(CDC)所長を務めていたスーザン・モナレズ氏が就任後1カ月足らずで解任された問題が、主要な焦点となりました。この公聴会は、米国の公衆衛生政策の方向性、特にワクチン接種に関する政府の姿勢について、深く議論する場となりました。
与党議員からの問い詰め:コロナワクチンとCDC所長解任
与党共和党のビル・キャシディ上院議員(ルイジアナ州選出、医師)は、トランプ前大統領が推進した新型コロナウイルスワクチンの開発・製造・供給を迅速に進めた「ワープ・スピード作戦」を高く評価し、その取り組みがノーベル平和賞に値するという意見にケネディ長官が同意するかを質問しました。ケネディ長官はこれに「イエス」と答えました。しかし、キャシディ議員は続けて、長官が以前にコロナワクチンがウイルス自体よりも多くの人々を死亡させたと発言したことについて問い詰めました。ケネディ長官はそうした発言を否定し、最終的に同ワクチンが病死を予防したことを認めたものの、具体的な効果については言及を避けました。
米上院公聴会で批判されるケネディ厚生長官。写真はトランプ大統領と握手する同氏
同じく医師である共和党のジョン・バラッソ上院議員(ワイオミング州選出)は、ケネディ長官が厚生長官指名承認公聴会で「最も厳しいワクチン接種要件を順守する」と約束したにもかかわらず、その後に国内ではしか感染が拡大し、国立衛生研究所(NIH)のトップからメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに対する疑問の声が聞かれ、さらに最近CDC所長が解任された状況に、強い懸念を表明しました。
民主党議員も追及:mRNAワクチン予算と政策の科学的根拠
野党民主党のマギー・ハッサン上院議員(ニューハンプシャー州選出)やラファエル・ワーロック上院議員(ジョージア州選出)、そして民主党と統一会派を組む無所属のバーニー・サンダース上院議員らは、mRNAワクチン技術の研究開発予算5億ドルの拠出を取りやめたことなど、ケネディ長官のワクチン政策における科学的根拠の欠如を追及しました。
モナレズ前CDC所長の反論とケネディ長官の主張
ケネディ長官が推進するワクチン政策に科学的根拠がないとして反対し、CDC所長を解任されたモナレズ氏は、同日に米紙ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で自身の見解を明らかにしました。彼女は、ワクチン推奨事項を事前承認し、CDCの複数のキャリア職員を解雇するよう指示されたことを告白。自身の解任は、米国のワクチン基準を弱める幅広い措置の一環だったとの見方を示しました。
これに対しケネディ長官は、モナレズ氏の解任は妥当だったとの立場を変えず、さらにCDC職員を解雇する必要があるかもしれないと強調しました。長官は、パンデミック時にCDCがマスク着用、社会的距離の確保、学校閉鎖、ワクチンの効果について米国民に「嘘をついていた」と主張。「これらの人物を何人か解雇し、二度とこのようなことが起こらないようにする必要がある」と述べました。
トランプ前大統領のコメント:ケネディ氏への信頼と「独特の考え」
ホワイトハウスで行われたビジネスリーダーとのイベントで、トランプ前大統領は記者団に対し、ケネディ長官は「善意に基づき行動しており、やや独特の考えを持っている」とコメントしました。ケネディ長官の行動に信頼を置いているかとの質問に対しては、「ここにいる多くの人は私を含めてケネディ氏を気に入っていると断言できる。ただ彼は異なる見解を持っており、それを全て聞きたい」と答え、一定の理解を示しつつも、その特異な見解に対する関心を表明しました。
今回の米議会上院公聴会は、ケネディ厚生長官のワクチン政策、CDC所長の解任、そしてパンデミック中の公衆衛生対応を巡る深い溝を浮き彫りにしました。与野党双方からの厳しい批判に加え、モナレズ前CDC所長の反論やトランプ前大統領のコメントが示唆するように、今後の米国の公衆衛生政策の方向性には引き続き大きな注目が集まるでしょう。