マリーナ・ラセルダ氏、エプスタイン事件で証言:権力と金が交錯する疑惑の再燃

ブラジル出身の37歳の女性、マリーナ・ラセルダ氏が、14歳当時に米資産家ジェフリー・エプスタイン元被告から受けた性的被害について公に証言しました。長年にわたり沈黙を強いられてきた被害者の声が、権力と金が絡み合うエプスタイン事件の深層を改めて浮き彫りにし、その政治的な波紋を再び広げています。これは、世界的な社会問題として、日本国内でも関心が高まっています。

エプスタイン事件の深層:ブラジル人女性の新たな証言

エプスタイン事件とは、2002年から2005年頃にかけて未成年者を対象とした性的人身売買が行われたとされる大規模な犯罪です。エプスタイン氏(2019年に勾留中に死亡)は、未成年の少女たちを勧誘し、自身が所有する邸宅やプライベートアイランドなどで性的搾取を行っていたとされています。被害者は1,000人以上にのぼると推測され、一部の少女は政治家や著名人を含む多数の権力者らに斡旋されていたとの証言もあり、この事件は個人の犯罪に留まらない広範なネットワークの存在が強く疑われています。

この広範な性的搾取ネットワークに関する捜査資料、通称「エプスタイン文書」の全面公開を義務付ける法案の議会通過を求め、被害者らが3日、米連邦議会議事堂前で記者会見を開きました。共和党のトーマス・マッシー下院議員と民主党のロー・カンナ下院議員が主催したこの会見には、被害者の一人であるマリーナ・ラセルダ氏も出席し、その声を上げました。

ジェフリー・エプスタイン事件の被害者であるマリーナ・ラセルダ氏が米連邦議会議事堂前で証言する様子。ジェフリー・エプスタイン事件の被害者であるマリーナ・ラセルダ氏が米連邦議会議事堂前で証言する様子。

マリーナ・ラセルダ氏の苦難と勇気ある告発

マリーナ氏は2002年、14歳の時にエプスタイン氏と出会ったと語っています。当時、母親と妹と共にブラジルから米国へ移住したばかりで、ニューヨーク・クイーンズ地区の小さな一部屋で3人暮らしをしていました。困窮する家計を支えるため、彼女は三つの仕事を掛け持ちする日々を送っていました。

そんな折、近所の友人から「年上の男性にマッサージをすれば300ドル稼げる」と教えられたといいます。しかし、彼女が「夢のような仕事」と信じたそれは、瞬く間に「最悪の悪夢」へと変わりました。ABCニュースの取材に対し、マリーナ氏はニューヨークで勧誘された少女たちのネットワークに組み込まれ、エプスタイン氏との性的接触を強要されたと証言しています。当初、この仕事が自身と家族の生活を好転させると信じていたというマリーナ氏は、「その『ゲーム』に参加すれば、ブラジルから来たただの移民ではなくなり、将来に希望が持てると思っていた」と、当時の切実な心情を振り返りました。

被害は3年間にわたって続き、17歳になったマリーナ氏はエプスタイン氏から「君はもう年をとり過ぎている」と言われ、彼が自分への関心を失っていくのを感じたといいます。その後、2008年に米連邦捜査局(FBI)が彼女の元を訪れ事情聴取を行いましたが、エプスタイン氏が司法取引を締結したため、裁判で証言する機会は与えられませんでした。彼女が公の場で証言できるようになったのは、捜査が再開された11年後のことでした。

3日の記者会見の場で、マリーナ氏は涙ながらにこう語りました。「ブラジル移民として、14歳から15歳という多感な時期を生き延びるために懸命に戦っていた小さな少女が、ついに声を上げることができました。このことは、私にとって大きな力となっています。」彼女の勇気ある告白は、世界中の同様の被害者たちに希望を与えるものとして注目されています。

「エプスタイン文書」を巡る政治的論争と陰謀論

エプスタイン氏は2008年に司法取引によって有罪を認めましたが、2019年、連邦当局はその合意を無効と判断し、性的搾取容疑で再び逮捕を命じました。逮捕から間もなく、エプスタイン氏は収監先で自殺したと当局は発表しましたが、これに関する陰謀論は根強く残っています。

2024年の選挙戦中、当時の大統領候補ドナルド・トランプ氏は、エプスタイン氏の性的搾取ネットワークに関与したとされる人物のリストを公開すると約束しました。これに伴い、今年2月、政府は一部の関連文書を公開しましたが、その中の一つであるエプスタイン氏所有の飛行機搭乗記録に、トランプ氏の名前が他の人物と共に記載されていたことが明らかとなり、大きな波紋を呼びました。両者が1990年代に親交があったことは公知の事実ですが、トランプ氏本人はこの事件で捜査対象にはなっていません。

同じく今年2月には、パム・ボンディ司法長官が「エプスタイン氏の顧客リストが手元にある」と示唆しましたが、その文書はこれまで一度も公開されていません。最近では、米司法省が調査関連文書に顧客リストは存在しないと発表し、トランプ氏自身もそのような文書は「偽情報である」と主張するに至っています。

このような立場の変化は、共和党支持者の間で強い反発を招いています。多くの支持者がエプスタイン事件に関する陰謀論を信じており、性的搾取ネットワークに関する全ての情報の公開を強く要求し続けています。

まとめ

ジェフリー・エプスタイン事件は、未成年者への性的搾取という重大犯罪に加えて、その背後に潜む権力者との繋がり、そして「エプスタイン文書」の公開を巡る政治的駆け引きにより、世界中で深い関心を集め続けています。マリーナ・ラセルダ氏のような被害者たちの勇気ある証言は、真実の究明と透明性の確保に向けた動きを後押ししています。今後、未だ明らかになっていない情報の公開が、事件の全貌解明と被害者への正義の実現につながるか、国際社会の注目が集まります。

参考文献

  • G1 (2025年3月3日): ブラジル人女性、エプスタイン事件で性的被害を証言.
  • BBC Brasil (2025年3月3日): マリーナ・ラセルダ氏の告白に関する記事.
  • ABC News (日付不明): マリーナ・ラセルダ氏への取材記事.