9月2日、参院選での歴史的敗北の責任を問う両院議員総会において、石破茂総理(68)は冒頭、「心から深く、深くお詫び申し上げる。大変に申し訳ないことでございました」と述べ、深々と頭を下げました。自らの地位への固執を否定し、「しかるべき時にきちんと決断する」と発言した瞬間、多くの議員が「ついに決着か」と予感しました。しかし、その後に石破総理はマイクを強く握り直し、賃金上昇、米国との関税問題、農業政策、防災庁の新設、外交安全保障という五つの重要政策を挙げ、「早急な解決が自民党に課せられた使命だ。責任から逃れずにしかるべき時にきちんとした決断をすることが、私が果たすべき責務だ」と改めて続投の意向を表明しました。
参院選大敗の責任を問われ、深々と頭を下げる石破総理。両院議員総会での謝罪と決意表明の瞬間。
両院議員総会での孤立と幹事長辞任の衝撃
党本部8階で開催された両院議員総会には、233名の国会議員が集結しました。35名が発言しましたが、石破総理の続投を明確に支持したのはわずか2~3名に留まり、発言の大半は総理の責任を追及するものでした。「この場で辞任すべき」「しかるべき時期とは具体的にいつなのか」といった退任時期に関する質問が相次ぎましたが、石破総理からは明確な言及はなく、総会は重苦しい雰囲気に包まれました。
特に会場に緊張が走ったのは、終盤に森山裕幹事長(80)がマイクを握ったときでした。野党との太いパイプを持ち、石破総理自身も「余人をもって代え難い」「いつも助けられている」と絶大な信頼を寄せていた森山幹事長は、居並ぶ議員たちを見渡し、「幹事長の職を退任させていただきたい。進退は任命権者の石破総裁にお預けする」と辞意を表明しました。この間、石破総理は隣席の有村治子両院議員総会長(54)に顔を向け、何事か話しかけていたといいます。
募る辞任圧力と党内の亀裂
元プロ野球選手で国土交通副大臣などを務めた石井浩郎参議院議員(61)は、「石破総裁はトップとして範を示さねばならないのに、けじめを付けない。退任の時期もしかるべき時が来たら、と言うだけで、明日なのか半年後なのか一年後なのか全く不透明だ」と、石破総理の曖昧な姿勢を強く批判しました。また、「幹事長にしても辞任を表明する一方で総裁に下駄を預け、辞任ではなく、進退伺い提出の状態。引き延ばして時間を稼いでいるだけではないか」と指摘し、森山幹事長の行動にも疑問を呈しました。
森山幹事長に続き、党四役が辞任を表明する意向を示しており、石破総理は党内で急速に孤立状態に陥りつつあります。政権運営の要である森山幹事長の慰留が、石破総理にとって喫緊の課題であることは明白です。森山氏の辞意が固い場合、石破政権下で幹事長を担える人材は限られています。
小泉進次郎氏幹事長抜擢説と衆院解散の思惑
反石破派の急先鋒である青山繁晴参議院議員(73)は、次期幹事長に小泉進次郎農相(44)が抜擢される可能性を指摘しました。石破総理の数少ない後見役である菅義偉元総理(76)は、小泉氏を「総理大臣にする」と公言しています。小泉氏は農水相と環境相の経験はあるものの、党運営能力には疑問符が付くという見方もありますが、「ポスト石破」で幹事長経験者は茂木敏充氏(69)だけという状況で、小泉氏が引き受ければ、高市早苗氏(64)や小林鷹之氏(50)との差別化にもつながります。青山氏は、短い期間であっても幹事長就任は総理総裁へのステップとなるため、小泉氏にとっても悪い話ではないと分析します。政局に不慣れな石破総理にとっても、小泉氏の高い知名度は魅力的であり、彼を幹事長に抜擢し、即座の衆院解散へと繋げたいという思惑があると見ています。
参院選敗北の責任問題が議論される総会で、笑顔を見せる石破総理と森山幹事長。その後の森山氏辞任表明を予期させる一枚。
衆院解散説は永田町でまことしやかに流れており、状況打破の切り札として期待されています。石破総理を擁護する鈴木宗男参議院議員(77)は、総会後記者団に対し、「自信を持って解散に打って出る。自民党員よりも日本国民に信を問えばいい」と語りました。8月24日には石破総理が小泉純一郎元総理(83)らと会食し、2005年の郵政解散の話で盛り上がり、政権運営のアドバイスを受けたとも報じられています。
迫り来る「臨時総裁選」のタイムリミット
石破政権を支持も反対もしない朝日健太郎参議院議員(49)は、「7月20日に参院選で大敗し、その後の両院議員懇親会や2度の両院議員総会を経ても何も改善していない。遅々として事が進まず、擁護派と反石破派の溝が深まるばかりだ」と現状への不満を漏らしています。
しかし、タイムリミットは刻一刻と迫っています。9月8日には、「臨時総裁選」の開催を求める議員が署名・捺印した書面を党に持参する予定です。自民党所属の国会議員と都道府県連代表の過半数である172人以上の要求があれば、自民党70年の歴史の中で初の臨時総裁選が開催されることになります。
石破総理が続投の拠り所としているのは、内閣支持率です。日本経済新聞社の世論調査(8月29〜31日実施)では、石破茂内閣の支持率は42%と、7月の前回調査から10ポイント上昇し、2月以来の4割台回復となりました。石破総理の側近は、「総理は『党内の世論と世間の世論は異なる』と何度も口にし、自身を鼓舞している。今までは臨時総裁選に対して『俺は出ないよ』と言っていたが、ここ最近は出るとも出ないとも口を閉ざすようになった」と語ります。8日の結果次第では、仮に臨時総裁選が開催となっても票差が詰まるようなら、総裁選出馬も視野に入れているのではないかと見ています。
石破総理は周囲に対し、「(臨時総裁選開催の書面が過半数に)届くか、届かないか読めないんだよ」と述べているとされ、石破政権の命運を分ける天王山が目前に迫っています。
参考文献: