近年、日本全国でクマによる人身被害が急増し、深刻な社会問題となっています。環境省統計では、2023年度は人身被害219人、死者6人。2025年度も増加傾向です。住民の安全確保のため、クマの駆除を担う狩猟者への報奨金が適正か、その実態が問われています。
クマ被害増加の背景と狩猟者減少の現実
クマ被害増加には複合的要因があります。環境省調査では、クマの生息域は平成15年度比でヒグマ約1.3倍、ツキノワグマ約1.4倍に拡大し、人里との接触が増加。山のブナの実不作時は、冬眠前のエサを求め人里へ降りるケースが多発します。
一方、狩猟者の数は減少の一途です。昭和50年度に約52万人だった狩猟免許取得者は、令和2年度には約22万人と約60%減少。特に60歳未満が約80%減少し、鳥獣被害対策の担い手不足が深刻です。
日本の人里に現れるクマと、駆除を巡る報奨金問題を示すイラスト
駆除報奨金の実態と「報酬とリスクのアンバランス」
クマ駆除報奨金は自治体により大きな地域差があり、一般的に1頭1万円から6万円程度が相場です。北海道浦河町では1頭1万円、出動5000円。対して紋別市は1頭6万円と顕著な差があります。
この金額に対し、狩猟者からは「安すぎる」との声が上がります。2024年5月、北海道奈井江町の猟友会は、町提示の1頭1万300円に対し4万5000円を要求。しかし受け入れられず、猟友会は鳥獣被害対策実施隊への参加を辞退しました。これは、危険な駆除を担う狩猟者と報酬との「アンバランス」を浮き彫りにしています。
日本で深刻化するクマ被害は、狩猟者減少と駆除報奨金の課題が複雑に絡む社会問題です。住民安全と野生動物管理の両立には、狩猟者確保・育成と、危険に見合う適正な報奨金制度の抜本的再検討が急務。包括的解決策が求められています。